3ー10 マンガ
3ー10 マンガ
ふとドレスのポケットに何かが入っているのに気付いた。
そうだ!
あたしは、ポケットの中に入っていたペンを取り出した。
それは、この世界に来た時に叔父さんにもらったペンだった。
あたしは、ペンで空中に光と書く。
すると。
辺りは、明るく照らされて。
「どうしましたか?チカ様」
メイアが隣から聞くのにあたしは、答えた。
「大丈夫、ちょっとここを住みやすくしようと思って」
あたしは、邪魔な壁を取り除いてメイアとダルメスの牢とあたしの牢を繋ぐ。
そして、明かりで照らされて薄汚さが露見した牢の中を浄化した。
一瞬でかび臭さも腐臭も消えて爽やかな花畑にでもいるみたいな甘い香りが辺りを漂う。
どうせしばらくここで暮らすのなら快適な方がいいに決まってるし!
あたしは、広くなった牢の中に家具を配置していく。
メイアとあたしとダルメスが一緒にくつろげるふかふかの大きなベッド。
食事がたっぷりと用意されているテーブルに座り心地のいい椅子を何脚か。
もちろん、熱いお茶も。
「すごいです、チカ様」
メイアが感嘆の声を漏らす。
ダルメスでさえも、ご機嫌で辺りをぱたぱたと飛び回っている。
『我の寝床はどこじゃ?』
ダルメスがいうので仕方なく、あたしは、ベッドの横に小さな籐製のカゴを出すとそこに暖かそうな毛布を敷きつめてやった。
あたしたちは、遅めの昼食を楽しんだ後、それぞれソファやベッドでくつろいだ。
あたしは、漫画とスナックとジュースを出してベッドに寝転んで過ごした。
もちろんドレスなんて脱いでジャージになってるし!
行儀が悪いけど、たまにはいいよね?
こちらの世界に来てからというもの漫画も読めなくて退屈してたんだ。
あたしは、最新の漫画雑誌を何冊も出した。
メイアとダルメスもスナックを摘まみながら自堕落な生活を楽しむ。
『なかなか面白いな、このマンガというやつは!』
ダルメスも気に入ったみたい。
あたしたちがだらだらと牢屋暮らしを楽しんでいると誰かの足音が聞こえた。
どうせ、ランディーノでしょ?
あたしたちは、マンガに夢中で顔も上げなかった。
「何をしているのよ、あんたたち!」
そこにいたのは、さっき毒を飲んで倒れた筈のマリカさんだった。
マリカさんは、顔を歪めて怒り狂っていた。
「せっかくあんたが牢に入れられてがっくりきているところを見に来たっていうのに、何これ?」
マリカさんは、地団駄踏んで悔しがっている?
「何よ!お菓子食べながら寝そべってマンガ読んで!あたしが毒で死にそうになってたのに!」
マリカさんは、凄い形相を浮かべて足でだんだん、と地べたを蹴飛ばしている。
「あたしがこの世界に来て苦労して懸命に生きてるときに!何がマンガ、よ!」
「よかったらマリカさんも読む?」
あたしが牢越しにマンガ本を差し出すとマリカさんがすごい剣幕で捲し立てる。
「何が、マンガ読む?よ、バカにして!」
「いらないなら、別にいいの。気にしないで」
あたしが手を引っ込めようとするとマリカさんが素早い動きでマンガ本を奪うと後ろに隠した。
「いらないとは、言ってないでしょ!」
突然、マリカさんがぎょっとした表情になる。
「ちょっと!なんでジャージなんか着てるのよ!ほんとに緊張感がない人たちね!」




