3ー9 牢獄
3ー9 牢獄
「この者たちを牢へ」
『西の魔女』は、低い抑揚のない声で命じた。
その場が慌ただしくなり白衣を着た治癒師らしい人たちがマリカさんに駆け寄る。
光がマリカさんを包み込むのが見えた。
「こちらへ」
騎士の1人があたしに告げた。
あたしは、拘束されて動けないメイアとダルメスを振り返ると2人の体を縛る光を手でむしって剥がした。
自由を取り戻した2人を追いたてるようにあたしは、その場を離れようとした。
最後にもう一度『西の魔女』をうかがうと彼女は、あたしを見つめて無表情にたたずんでいた。
唇が微かに動くのが見えた。
『あなたは、誰?』
あたしは、頭を振った。
知らない!
あたしは、何も知らない!
あたしは!
あたしたちは、そのまま騎士たちに連れられてその場を去った。
騎士たちは、あたしたちを城の地下にある牢へと連行した。
あたしたちは、固い石の壁に隔てられた牢の中に1人づつ別れて入れられた。
真っ暗でなんだかかび臭くて、湿っぽい牢の中であたしは、心細くて。
1人、壁際に腰を下ろしていると隣からダルメスとメイアの声が聞こえた。
「大丈夫ですか?チカ様。わたしが不甲斐ないばかりに申し訳ありません。すぐにでもなんとかしてここからチカ様を逃がして見せますから、しばらく我慢していてくださいませ!」
『あの姥狸めが!王の契約が無ければすぐさま城ごと焼き尽くしてくれるのに!』
牢に入れられているのにまったくいつもと変わらない2人の様子にあたしは、思わず笑ってしまう。
不意にかつん、と足音が聞こえて明かりが差し込む。
あたしは、眩しくて目を細めた。
「チカ様!ご無事ですか?」
そこには、ランディーノの姿があった。
「お前!」
隣の牢からメイアが声を荒げる。
「今までどこにいた!?チカ様が牢に入れられたというのに自分だけのうのうと!」
「失敬な!」
ランディーノがむくれたように告げる。
「みな牢に繋がれては公爵様に助けを求めに行く者がいなくなるでしょう?それで、私は、泣く泣く姿を隠していたのです」
「ともかく、ランディーノだけでも無事でよかった」
あたしは、ランディーノのふてぶてしい姿になぜかホッとしていた。
「ランディーノは、なんとかして叔父さんにこのことを知らせて!」
「かしこまりました、チカ様」
ランディーノが胸を張る。
「お任せください!私がすぐに公爵に知らせてみなさんをここから出して差し上げますからね!それまでどうかご無事で!」
言い終わるがはやいか、ランディーノは、姿を消してしまった。
あたしは、ランディーノが無事に叔父さんのところまで行けるようにと祈っていた。
一刻もはやくメイアの、いや、あたしたちにかけられた疑いを晴らさなくては!
しかし。
あたしは、暗闇に目を凝らした。
ほんとに嫌な感じのところだ。
目が慣れてもはっきりとは見えないがなんだか腐ったような臭いもしているし!
これまで、どれほどの人たちがここに入れられたのか。
その中には、あたしたちみたいに無実の罪で入れられた人もいたのだろう。
そういった人たちは、どうなってしまったのだろうか?
あたしたち、ここで誰にも知られずに消えていくのかな?
あたしは、ため息をついた。
叔父さんは、きっと怒るだろうな。
この城には叔父さんですら手が出せないっていってたもの。
そんなところで問題を起こすなんて。
あたしは、だんだん落ち込んできていた。
考えていると怖くなる。
とにかく明かりが欲しかった。
それでなくてもじめっとしているのにさらに冷たい床に腰を下ろしていたせいか、寒気がする。




