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1ー3 お屋敷

 1ー3 お屋敷


 あたしたちが乗った馬車は、長く続く緩い坂道をどんどん登っていく。

 ミルカリアの街は、螺旋状に上に伸びている街のようだった。

 螺旋の上には、きれいなお城があった。

 まるでお姫様が住んでいるようなお城だ。

 「あの城が気になるの?」

 叔父さんがあたしの肩越しに外を覗き込む。

 息が頬にかかって顔が熱くなる。

 距離が近いし!

 「あそこには、怖い魔女がいるんだよ?チカ」

 叔父さんが冗談めかして言った。

 「チカのことなんて頭から齧られちゃうぞ?」

 齧る?

 あたしは、ぎょっとしてしまう。

 叔父さんは、あたしの様子を見て口許を綻ばせる。

 「冗談だよ」

 叔父さんがあたしに囁いた。

 「でも、忘れないで、チカ。魔女は、君の味方ではないからね」

 ええっ?

 あたしがまじまじと叔父さんを見上げると叔父さんは、真面目な顔であたしを見つめていた。

 馬車は、1時間ぐらいかけてお城の下にある区画へと向かった。

 そこには、すごく立派なお屋敷が立ち並んでいて目を見張ってしまう。

 その中でも特に目を引く立派なお屋敷があった。

 赤いレンガと白い石作りのそのお屋敷は、周囲を木々に囲まれていてどことなく神秘的な印象を与えられる。

 馬車は、その屋敷を囲む門扉の中へと進んでいった。

 もしかしてここが叔父さんの家なの?

 あたしが驚いていると叔父さんがふっと笑った。

 「お城ほどじゃないけど、この屋敷もなかなかいいだろう?」

 あたしは、こくこくと頷いた。

 お屋敷の玄関付近で停車した馬車から叔父さんが降りるとあたしに手を差し出した。

 「おいで、チカ」

 あたしは、叔父さんの差し出した手に右手をのせると叔父さんのエスコートで馬車から降りた。

 左右に別れて並んでいる使用人のお仕着せを着た若いお姉さんたちが一斉に頭を下げる。

 「お帰りなさいませ、ご主人様」

 あたしが驚いていると叔父さんがお姉さんたちの前をあたしの手を引いて歩き出す。

 「疲れたろう?チカ。君のための部屋も用意してあるんだよ」

 はいっ?

 あたしは、もう、夢の中にいるみたいで。

 足元がふわふわしてて。

 叔父さんの手を離したらどこかに飛んでいっちゃいそうで叔父さんの手をしっかりと握っていた。

 叔父さんは、あたしをお屋敷の中へと導いた。

 手は繋いだまま赤い絨毯が敷き詰められた廊下を進み、大きな階段を上って2階の通路の奥にある部屋へと向かった。

 白い扉に金色のドアノブがついた部屋の扉を開くとそこには、まるでおとぎ話の中にでてくるお姫様の部屋みたいなかわいい部屋があった。

 白を基調に選ばれた家具は、アンティーク調でところどころに使われている金の差し色が控えめに豪華さを主張している。

 隣の部屋は、寝室で大きな天蓋付きの白いベッドが置かれていた。

 あたしは、大きなベランダに繋がっている窓に近寄ると軽く押して窓を開いた。

 ふわりと甘い香りがして花びらが舞う。

 「わぁっ・・」

 白いベランダから見える庭には、赤や黄色の色鮮やかな花々が咲き乱れている。

 田舎では、まだ季節は、冬だったのに。

 あたしは、ふと故郷に置いてきた両親のことを思い出した。

 東京に行くだけでもすごく心配していた両親だから、まさか、異世界に来てしまったとしればどんなに取り乱すことか。

 あたしは、叔父さんが言ってた学校の入試だけ受けたらすぐに母さんたちのもとに帰ろうと心に決めた。

 「いい部屋だろう?チカのために用意したんだよ。気に入ってくれた?」

 あたしは、叔父さんを振り向いた。

 「すごいすてきな部屋だから緊張しちゃって」

 「大丈夫。すぐに慣れるよ」

 叔父さんは、上着のポケットからリボンが結ばれた小さな木の箱を取り出すとあたしに渡した。

 「これ、ちょっと早いけど学校の入学祝いだよ」

 「ええっ?まだ、試験も受けてないのに。叔父さん、気が早すぎ!」

 あたしは、言いながらもちょっと嬉しくて。

 さっそく開けてみることにした。

 小箱の中に入っていたのは、1本のペンだった。

 金色のとってもおしゃれな万年筆って感じのペンだ。

 「ありがとう、叔父さん!」

 あたしが微笑むと叔父さんがちょっと照れたように頭をかく。

 

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