3ー7 魔女の城
3ー7 魔女の城
叔父さんに見送られてあたしたちは、『西の魔女』のお城へと向かって出発した。
馬車の御者は、ランディーノだった。
叔父さんがあたしに従者としてつけてくれたのだ。
叔父さんは、ほんとに心配性だな。
あたしは、馬車に揺られながら思っていた。
なんていうか。
過保護?
ただのお茶会に招かれただけ。
しかも、『西の魔女』には、召喚されたばかりの『幻獣の女王』がいるんだし!
馬車が螺旋状の坂道を上っていくとだんだんと城が大きくなってくる。
それが、『西の魔女』の力が近づいてくるようであたしは、身震いしていた。
怖い。
その時、メイアがあたしの手をそっと握りしめた。
「大丈夫です、チカ様」
メイアがあたしに微笑んだ。
「何があってもわたしは、チカ様のお側にいますから」
メイアの暖かい手があたしの心を決めさせる。
大丈夫!
あたしたちは、無事に『西の魔女』のもとから戻ってこれる!
「そろそろ城に到着します」
御者席のランディーノが声をかけてくる。
あたしは、深呼吸すると顔を上げる。
「行くよ、みんな!」
馬車が城の門を通って馬車停めで停車するとランディーノがドアを開ける。
メイアがまず降りるとあたしが馬車から降りるのをエスコートしてくれた。
今日のあたしは、最強!
叔父さん御用達のルミナ商会の会頭であるヨゼフさんが自ら作ってくれたブルーのドレスを着て、緩く髪を後ろで結っている。
黒淵のメガネは、仕方ないけれど、それでもなかなかかわいかった。
自分で言うのもなんですけど!
城の入り口で待っていた城の使用人があたしたちに礼をとる。
「フロイラス城へ、ようこそ」
ランディーノを先頭にしてあたしとメイアが並んで城の中へと進んでいく。
魔女の城の中は、静まり返っていて石の床にあたしたちの足音だけが響く。
壁にかけられている古い肖像画は、どの人もあたしたちを見つめているような気がした。
城の使用人は、あたしたちを城の中庭へと案内した。
そこは、不思議なところだった。
周囲には、熱帯に生えているような植物がある。
むせるような緑の香り。
進んでいくと開けた場所にでる。
そこには、黒いドレスを着たミランダ先生と赤いドレスの見知らぬ女の子。そして、なぜかその場にそぐわない天蓋つきのベッドが置かれていた。
「よく来てくれた、チカ嬢」
ミランダ先生は、いつもと同じ優しい笑みを浮かべていた。
けれど、その瞳の奥には冷たい光が宿っている。
先生は、あたしに椅子をすすめる。
ランディーノが椅子を引いてくれてあたしは、テーブルにつく。
いつものメイド服を着たメイアは、あたしのすぐ後ろに立っている。
「紹介しよう」
ミランダさんが隣に腰かけている黒髪の日本人らしい女の子を指した。
「麻里佳嬢だ。麻里佳嬢、こちらは、チカ嬢だ」
「初めまして」
麻里佳さんがあたしににっこり微笑んだ。
でも。
目が笑ってない?
麻里佳さんは、ふわりとした長めのボブの髪に赤いリボンを結んでいるとっても可愛らしい子だ。
あたしもぺこりと頭を下げる。
「チカです。よろしくお願いします」
お城の使用人があたしたちにお茶の入ったカップを給仕する。
ミランダ先生は、あたしにお菓子をすすめてくれた。
「城の調理人が作った焼き菓子よ。なかなか美味しいから食べてみて」
「ありがとうございます」
あたしは、礼を言ったが菓子には手をつけなかった。
あたしたちの中の誰もお茶やお菓子に手をつける者はいなかった。
重々しい沈黙が流れる。




