3ー4 もう1つの召喚
3ー4 もう1つの召喚
あの後、あたしと叔父さんは、例の普通クラスの校舎にある応接室に通されていた。
あたしは、弱っているダルメスをなんとか元気付けようと思って鍛練着に包んで抱き締めている。
ダルメスは、目をうっすらと開けているがショック状態のようでぴくりともしない。
「甘やかすんじゃない、チカ」
叔父さんがあたしに言った。
「そいつがいい気になるだけだ!」
「でも!」
あたしは、叔父さんを見上げる。
「この子が死んじゃったりしたら!」
『・・我は、もう、ダメじゃ・・さらばじゃ、女王よ・・』
「ダルメス!しっかりして!」
ダルメスを抱く手に力を込める。
叔父さんは、そんなあたしたちをさめた目で見つめている。
「安心しろ。幻獣は、簡単には死なない」
はいっ?
叔父さんの言葉にあたしは、パチパチと瞬きした。
この蜥蜴も幻獣なの?
「というか!」
叔父さんがちょっとすねたみたいにあたしに文句を言う。
「チカは、誰にでも優しすぎるんだ!そんなでは、付け入られることになるぞ!」
「・・わかりました」
あたしたちの正面に座っていたスワロウ先生がひきつった笑顔を浮かべている。
「しかし、なんにせよ、授業中に突然、入ってこられても」
「入ってきたのではない。転移してきたんだ」
「転移でも、ダメなものはダメなんです!」
叔父さんの言葉にスワロウ先生が応じる。
「てか!この学園には、特殊な魔法障壁が張り巡らされている筈。にもかかわらず転移してきた、と?魔法師たちが泣きますよ!」
叔父さんは、ぷいっとそっぽを向いている。
「つまり・・整理するとこう、ですか?」
スワロウ先生が頭を抱えている。
「姪っ子様が危険なものを召喚する予感がして転移してきた、と?」
「そうだ」
叔父さんが不満げに答える。
「何か問題でも?」
スワロウ先生が何かいいたげな様子でじっとあたしと叔父さんを見つめているし!
スワロウ先生が根負けしたように頷く。
「確かに、あなたのおかげで生徒たちが怪我をするのを防ぐことができました」
そうだろう、というように叔父さんがあたしを見る。
「しかし!」
スワロウ先生が語気を強める。
「あなたには、お伺いしたいことがたくさんあります、ジークナー公爵!」
「なんでしょう?」
叔父さんが笑顔を浮かべてスワロウ先生に向かいあった。
「答えられることであれば、なんなりと」
「では」
スワロウ先生が口を開く。
「まず、この姪っ子様の正体は?いったい何者なんです?この子は?」
「それは、答えられないな」
叔父さんがそっけなく応じる。
スワロウ先生は、負けずに次の質問に移る。
「それでは、この子が召喚した蜥蜴もどき、これは、いったい何なんですか?」
「それも、答えられない」
「なら!いったい何なら答えられるんです?ジークナー公爵!」
スワロウ先生がどん、とテーブルを叩いた時、ドアが開いてミランダ先生が入ってきた。
「無駄よ、スワロウ。その男は、本物の狸なんだから」
ミランダ先生がスワロウ先生の横に腰を下ろす。
「わかってるのは、公爵の身分と、それと姪っ子のためになら国も滅ぼしかねないってことだけ」
「よくご存知で」
叔父さんがにっこりと微笑む。
ミランダさんも負けずに微笑んだ。
「そんな公爵に朗報よ」
ミランダさんが真面目な表情をして叔父さんを凝視した。
「『幻獣の女王』が召喚されたわ」




