2ー5 おめでとう
2ー5 おめでとう
「どういうことだ?」
「わからん!」
じいちゃん試験官が顔をしかめる。
「しかし、無属性の者にこんなことができるわけはない。この者が何か、小細工したのに違いない!」
「チカ嬢が小細工することは不可能です」
ミランダさんが声を上げる。
「これだけの者が見ていたのです。石に細工することなど不可能です!」
「でも、それ以外には考えられないわ」
赤毛のおばさん試験官があたしをびしっと指差した。
「あなたは、失格です!」
「そんな!」
ミランダさんが口を開こうとするのを若い銀髪の試験官が押し止める。
「では。私が特別試験をしましょう」
「スワロウ!」
「大丈夫だ、ミランダ。私は、誰にも平等だからね」
スワロウと呼ばれた試験官があたしの足元へ模造剣を投げた。
「拾いなさい、チカ嬢。これから特別試験だ」
ええっ?
あたしは、青ざめた。
剣で試験?
あたしは、すがるようにミランダさんを見た。
もう、不合格でいいから剣で試験なんて嫌!
「いいでしょう」
あたしのアイコンタクトは、ミランダさんには通じなかったらしく、ミランダさんは、自信満々な顔をしている。
「剣での試験ならチカ嬢にとっては不利ではないでしょう」
いやっ!
不利でしかないのですが!
「剣を拾え!チカ嬢。さもなくば、このまま」
「ひゃいっ!」
あたしは、反射的に剣を拾うと構えた。
足が!
ぷるぷる震えているし!
それを見て受験生たちが嘲笑しているのが聞こえた。
「なんだ?あの構えは?」
「腰がひけてるぞ!」
あたしは、涙ぐんでいた。
スワロウとかいう銀髪の試験官は、剣を片手で構えるとあたしに剣先を向ける。
「これでは、小細工もできまい。覚悟しろ!」
「ひゃあっ!」
あたしは、おかしな声をあげて剣を振り回した。
と。
スワロウ試験官の剣に当たって!
ぴしっと音がして試験官の持っている剣が折れた!
「なんだと?」
スワロウ試験官が信じられないという表情であたしを見た。
「剣が折れた?そんなバカな!」
「勝負あったわね」
ミランダさんが声を発した。
「この勝負、チカ嬢の勝ち、よ!」
その場は、静かりかえっていた。
受験生たちがあたしとスワロウ試験官を凝視しているのがわかる。
しばらくするとスワロウ試験官が剣を捨てて、降参というように両手を上げる。
「運も実力のうちだからな。私の敗けだ」
試験官の敗北宣言に場内にいた受験生たちがどっと歓声を上げた。
「すげぇ!」
「スワロウ・ローゼスって、剣聖だろ?」
「剣聖に勝った?あんな子が?」
はいっ?
あたしは、まじまじと目の前にいる銀髪の試験官を見つめていた。
スワロウさんは、あたしににっこりと微笑みかけた。
「おめでとう。入学決定だな、チカ・ヤツハシ・ジークナー公爵令嬢」
あたしは、呆然と立ち尽くしてしまった。
試験に落ちる気満々だったのに!
このままでは、あたし、もとの世界に帰れない?
試験管たちが顔を見合わせてぼそぼそと何か話し込んでいるのに気付いてあたしは、最後のチャンスかも、と思った。
このまま、なんらかの理由をつけてあたしを失格にしてくれたら!
話し合いを終えたらしい試験管たちがあたしの回りを囲む。
「チカ・ヤツハシ・ジークナー公爵令嬢」
「はいっ!」
あたしは、どきどきしながらじいちゃん試験官を見守っていた。
「お主は、合格じゃ!」
じいちゃんがふにゃっと笑った。
「この学校でしっかりと精進するように」




