2ー1 入学試験の日
2ー1 入学試験の日
あっという間の一週間が過ぎ、あたしの魔法学園の入学試験の日がやってきた。
あたしは、小綺麗なフリルがたくさんついたクリーム色のワンピースを着て髪を結い上げていた。
叔父さん家の馬車で叔父さんと一緒に魔法学園へと向かう。
魔法学園は、このミルカリアの街の行政区画にある大きな学校だった。
叔父さんの家からは、徒歩で30分ぐらいらしいんだけど、そこは、一応、公爵家のご令嬢であるあたし。
馬車で通うことになっていた。
あたしは、この魔法学園の試験が終わったらもとの世界に戻るつもりだった。
でも。
あたしは、叔父さんにまだその話をすることができていなかった。
だって、あの大きなお屋敷に1人で暮らしている叔父さんを放っておけなくて!
きっと叔父さんは、寂しいからあたしを呼び寄せたのに違いない。
そう思うと、もう帰る、とか言えなくて。
でも、それも今日で終わる。
学校の試験に落ちてしまえば叔父さんだってあたしにこの世界に残れとはいえないだろう。
あたしは、ちょっとだけ胸が痛んだ。
隣に座っている叔父さんをちらっと見ると叔父さんと目があった。
叔父さんは、蕩けるような笑顔を浮かべる。
「緊張してる?チカ」
叔父さんの言葉にあたしは、こくりと頷いた。
叔父さんは、あたしの頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ、チカ。いつも通りにしていればいいんだ。あと」
叔父さんがあたしの手を握る。
「僕がプレゼントしたペンとメガネ、持ってるね?」
「うん」
あたしは、叔父さんを見つめたままパチパチと瞬いた。
叔父さんからもらったペンとメガネ。
それは、叔父さんの中にいるユニコーンの力を使った魔道具なのらしい。
ペンは、あたしのたいていの願いを叶えるし、メガネは、あたしがこの世界で暮らすのに不自由がないように言葉を翻訳してくれている。
あたしは、叔父さんと2人きりのときは、メガネは、かけていない。
叔父さんは、あたしにわかる言葉で話してくれるから。
「1つだけ、約束してくれる?チカ」
叔父さんがあたしに告げた。
「ペンは、チカのどんな願いも叶えるけど、人をむやみに傷つけることだけはしないで。もし、無意味に人の血が流れると僕の中のユニコーンが暴れだして僕にも制御することができなくなるから」
「もし、そうなったらどうなるの?」
あたしが怖々聞くと叔父さんは、いつもと変わらない笑顔で答えた。
「もしかしたらこの国1つぐらいなら簡単に滅ぼしてしまうかもしれない」
マジで?
あたしは、ペンで人は傷つけないようにしようと心に決めていた。
馬車が停まって御者をつとめていたグランティスさんが扉を開けてくれた。
叔父さんが先に降りるとあたしをエスコートしてくれる。
そこは、古めかしい大門の前だった。
高い塀の向こうには、石造りの塔がいくつも見えている。
辺りは、あたしの他にもたくさんの同い年ぐらいの子供たちがいて騒がしかった。
でも、保護者が一緒なのは、あたしだけで。
あたしは、みんなの視線を感じて頬が熱くなるのを堪えていた。




