10ー1 女子会
10ー1 女子会
学期末の舞踏会の数日前。
あたしとメイアとマリカさんは、アンナさんの家に集まっていた。
これは、アンナさんが言い出したことだった。
いわゆる舞踏会前の合宿。
とはいえやることといえば舞踏会に着ていくドレスの見せ合いやら、誰と踊ることになっているか、とかそういう女子トークばかり。
夜遅くにそれぞれ可愛らしい夜着に着替えて恋ばなするのは、異世界でも共通のお楽しみだ。
しかし。
あたしたちは、というと可愛らしいジャージ姿での参加となる。
みんなお揃いのピンク色のジャージ。
ジャージとはいえ、ヨゼフさんが造ってくれたものは、上着の裾に白いレースのフリルがついていてとってもおしゃれだし!
あたしたちは、ジャージでくつろいであたしがペンで出した駄菓子を食べながら盛り上がっていた。
「マリカさんは、教会の聖騎士の方にエスコートしてもらうんでしょ?」
アンナさんがポテチを摘まみながら唇を尖らせる。
「結局、エスコートしてくれる男子が決まってないのってあたしとメイアだけ?」
「決まってるっていってもあたしは、グリエ君だし」
あたしがため息をつくとアンナさんが身を乗り出す。
「でも!グリエ君って実は、王族だって噂だし!意外とありだし!」
グリエ君は、学園に戻ってきてからは、ほぼほぼ毎日アンナさんの、というかヨゼフさんの工房に入り浸っている。
父である王様との約束で魔法学園に通っている間だけは、ヨゼフさんに魔道具師として弟子入りを許されたのだとか。
期限が決まっているなんて少し悲しい気もするけど、グリエ君本人は納得しているみたい。
あたしにくれた花飾りもヨゼフさんの工房で造ったものだし。
ヨゼフさんは、グリエ君の事情を知った上でグリエ君を弟子にしている。
グリエ君は、それだけの才能がある魔道具師なのだ。
アンナさんがあたしの肩に手を回して問いかけた。
「それとも、チカは、他に誰か誘って欲しい人がいるとか?」
「・・それは・・」
あたしがいい淀んでいるとアンナさんが目をすがめる。
「婚約者がいるのに、それ以外の誰と踊りたいっていうの?」
あたしは、黙ったまま、アンナさんから視線をそらす。
「ジークナー公爵?」
マリカさんが小声で呟くのを聞いてあたしの肩が跳ねる。
アンナさんがはっと目を見開く。
「そうなの?チカ、あなた、公爵のことが好きなの?」
「それは・・」
あたしは、視線をそらしたまま、俯いた。
アンナさんがふぅっと吐息を漏らす。
「叔父さんのことが好きって、ねぇ」
「でも!わかるような気がします!」
マリカさんが珍しく力説する。
「ジークナー公爵は、とっても素敵な方だし。それに、チカとは義理の叔父さんにあたるんでしょう?」
「それなら、叔父さんと結ばれるのもありなんじゃ?」
アンナさんがこてん、と首を傾けてあたしを覗き込む。
「チカは、どうしたいの?」
「あたしは・・」
あたしは、口ごもる。
「叔父さんと・・踊りたい!」




