1ー1 東京さ行くだ!
1ー1 東京さ行くだ!
田舎の夜は暗い。
ボンヤリとした街灯が1つだけある田舎道であたしと父さんと母さんは、バスを待っていた。
「気をつけるんやで、チカ」
父さんがあたしに紺色のボストンバッグを渡しながら涙ぐむ。
「風邪なんかひかんとな」
「まあ、優真君がおるから大丈夫やとは思うけど」
母さんが心配そうな顔をしている。
「悪い男には気をつけなあかんで」
「わかっとるよ」
あたしは、笑顔で答える。
「ちゃんと毎月、手紙も書くし。叔父さんがいるんやから心配ないて」
遠くから車の走ってくる音が聞こえて夜行バスの灯りが見えてくる。
オレンジ色の小型のバスは、一晩かけて高速を走って東京へと向かう。
あたしは、荷物を持ってバスに乗り込んだ。
窓を開けると手を振る両親に声をかける。
「心配せんで!また休みには、帰ってくるで!母さんたちも風邪引かんでね!」
「元気でな!チカ」
「発車します!」
運転手のおじさんが言ってバスは、走り出した。
あたしは、いつまでも見送ってくれている両親を見て手を振っていた。
直に両親の姿は、闇にのまれてしまってあたしは、ちょっとだけ寂しくなる。
夜間高速バスの中央辺りに腰を下ろして周囲を見回すがバスには、あたしの他には客は乗車していないようだ。
あたしは、荷物を隣の座席に置くとどかっと背もたれを倒して目を閉じた。
半年前に叔父さんから高校は、東京の学校に行かないかって言われたときは、びっくりしたけど胸がどきどき高鳴った。
だって!
東京だし!
あたしが住んでる町、いや、村は、いわゆる限界集落で。
あたしん家の回りにはほぼほぼ家もなくて、離れたとこに笹原のじいちゃん家が1軒あるだけ。
あたしは、自転車で3時間かけて中学校に通ってた。
高校に入ったら下宿先を探す予定だったんだけど、急遽、予定を変更して叔父さんが住んでる東京に上京することになったんだ。
あたしの叔父さんは、父さんの弟だけど血は繋がってない。
おばあちゃんは、後妻さんで外国人。
だから叔父さんも金髪に碧眼のイケメンさん。
しかも、叔父さんは、東京で小説家をしてるらしい。
もう、東京なんて、あたしたちからすれば外国と同じだし!
田舎じゃ叔父さんも目立ってたけど、東京じゃ、普通なんだろう。
叔父さん。
あたしは、叔父さんからもらった黒淵メガネを外して目を閉じる。
相変わらず、かっこいいんだろうな。
あたしは、にやにやしながら眠りについた。
何時間ぐらい眠っていたのだろうか?
次に気がつくともう、辺りは明るくなっていて。
あわてて窓から外を見ると。
「これが、東京かぁ」
辺りにはレンガや岩作りの家々が軒を連ねていて、まるで本で読んだ中世のヨーロッパの町並みみたい!
バスががたがた揺れて舌を噛みそうになる。
道にはたくさんの人が歩いてて。
女の人は、みんな、裾が長いワンピースを着てて。
これが今の流行りなのかなってあたしは、首を傾げた。
バスターミナル?には、馬車がたくさん並んでいて、ていうか、馬車?
いやいやいや!
いつの間にか、あたしが乗ってるバスも大きな馬車に変わってるし!
どういうこと?
あたしが運転手さんに問いかけようとしたら運転手さんが振り向く。
それは、巨大なハチワレ猫だった!
ぎょっとしているあたしを見て猫は、にんまりと笑った。
「お疲れ様です、お客様。ミルカリアの町に到着しました!」
「ミルカリア?」
てか!
ここどこですか?




