真実の告白
あの子__F‐369の“回収”に手を貸してからしばらく。何の音沙汰も無かった。
“特例だ”と楊震さんに連れて行かれた先は、調整槽室ではなかった。
扉を開け、中に導かれる。
何かの警告音が鳴っていて楊震さんが“またか”と舌打ちした。
視線の先には彼がベッドで横たわっていた。横向きに寝るその姿は僕の記憶にある彼の寝方とは少し違った。投げ出された腕には空しくテープだけが残り、点滴の針は行く宛もなくぶら下がっていた。
「何度付けても外されてな。どうにかしようにも火事場の馬鹿力で固定もさせない。」
楊震さんの溜息に苛立ちが混じっている。
「…可哀想に。」
温かみの無い頬に触れると、彼は薄っすらと目を開けると反応し、腕を守るように引き寄せた。
「安心して。僕は何もしないから。君の言葉が聞きたいんだ。君は、何を求めてるのかな?どうしたら、また元通り食べたり、眠ったりしてくれる?」
「……__」
一瞬、空白を置いて彼が口を開いた。
掠れて小さな声で
“消さないで”
とただ一言そう告げた。
“消す”という単語は、すぐに“記憶”と結び付いた。
彼の中におそらくは僕はもう居ない。記憶を消されるという事だけを理解して、彼から消された僕に、消さないで欲しいと訴えている。その図は複雑で、僕は胸が苦しくなる。
きっと、彼は動力庁舎の外の世界で大切にしたい存在とたくさん出会えたのだろう。
可能であれば、消させなどせずに残してあげたい。そう思いながらも
「ごめんね。それは出来ないんだ。」
残酷な返答をするしかなかった。
「君には大切な存在がたくさん出来たんだよね?君から彼らを居なかった事にするのは、その人達を守るためでもあるんだ。…全てを話すから、聞いてくれるかな?」
眼が、弱々しく真っ直ぐにこちらを射抜いてくる。この話を聞いて、彼が納得するかどうかはわからない。僕は、少し緊張しながらも続けた。




