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へんか

遅番の特権である朝寝を堪能した後、流輝は孤児院に足を運んだ。

楼蘭から朝に燈夜が来ていたと聞き、満足そうに笑った。

流輝はミロクを預ける前から定期的に顔を出していたが、燈夜は少し疎遠になっていた。口には出さないが、楼蘭も少し寂しそうにしていたのを知っているので、そんな小さな変化も素直に嬉しい。


「あ、お姉ちーゃん!」

「やっほー、二日振りっ!」

嬉しそうに駆け寄ってくる子供を抱き止める。自分にとって楼蘭が“お姉ちゃん”であるのと同じように、この子供達にとっては流輝が“お姉ちゃん”だ。

「お姉ちゃん、聞いて!さっき、あのお兄ちゃんが喋ったの!」

その無邪気な一言に流輝の目が一瞬にして丸くなった。子供が指差す先には、子供達に囲まれるミロクの姿が見える。

「うそ!何て言ったの?!」

「んー、わかんない。」

「え??」

ミロクが喋った事以外何一つ理解出来ず、子供に囲まれる不思議そうな顔をしているミロクの元へと向かう。子供達は口々に“喋った!”と目を輝かせてミロクを見上げている。

「なになに、どしたの?」

笑顔の子供達に囲まれたミロクから少し困惑した視線が送られるが、彼の口から説明される様子はない。

「みんな、落ち着いて!ミロク、何て?」

子供達に視線を合わせそれぞれと目を合わせながら問う。

「スーがね、何で喋らないのか聞いたの。そしたら“きょかがおりてない”って。“きょか”って何?」

(許可が、下りてない?話すのに?)

「許可っていうのは、“いいよー”っていう事だよ。」

求められるままに噛み砕いて教える。

「ほら!だから言ってんじゃん!オレ、合ってた!」

「でもスーたち、いいよって言われなくても喋ってるよ?」

「んー、そうだよ… ねぇ?」

自分もあまり理解していないこの状況を、どう説明するべきか流輝が目を泳がせる。

「本当はおしゃべりして良いか、聞かなきゃダメなの?」

「そんな事ないよ。」

「じゃあ何でお兄ちゃんはそう言ったの?」

(やば〜、突っつかなきゃ良かったかも…)

「なに騒いでんだい?」

口々にぶつけられる疑問に笑顔は浮かべながら内心嫌な汗を掻く流輝に助け舟を出したのは楼蘭だった。

流輝に伝えたのと同じような内容を耳にし、楼蘭は子供達ではなくミロクに向き合った。

「もう。あんた、どんな厳しい学校に居たんだい?許可なんか無くたって、好きに話せば良いんだよ?」

少し大袈裟な口調は、ミロクに聞かせているようで周りの子供達にも聞かせているようでもあった。

「学校が厳しいと“きょか”がいるの?」

「あんた達だってみんなで勉強する時、“静かに”、“喋らない!”って言われるだろ?それと同じだよ。ミロクの学校はきっと厳しかったんだ。」

楼蘭の説明に子供達は何となくの理解はしたようだった。楼蘭が流輝に顔だけ向け、ウィンクしてみせた。

「お姉ちゃん、神…っ」

流輝の尊敬の眼差しを受けながら、もう一度ミロクの顔を見る楼蘭。

「良いかい?見てわかるだろうけど、ここはあんたが思う以上に自由な所だ。話しても良い。話さなくても良い。ただ、この子達の顔を見てごらん?あんたが喋ってくれたのが嬉しいんだ。」

見渡す子供達は言葉を発さないと思っていたミロクがほんの一言でも喋った事に嬉々として輝いている。

「みんな、あんたとおしゃべりしたいんだ。もちろん、流輝もあたしもね。…強要はしない。気が向いたら“許可”なんて気にせず、いつでも喋っとくれ。その方が、あたし達も嬉しい。」

頷く程度の反応があれば良い。そう思いながら伝えた言葉。

「……はい。」

短くはあるが、返った返事に今度は流輝も一緒になって歓声を上げた。

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