仕事熱心な死神
小さな国の神、小国神で国内では唯一の神とは言っても
数柱の神とは交流がある
人づきあい。ならぬ、神づきあいというヤツだ
その中で死神との神づきあいは必要なのだが面倒だ
数ヶ国を掛け持ちで担当している死神が巡回してくるのだが
新しく配属された死神は仕事熱心で情熱的だった
自分の仕事を増やすために色々と語りかけてくる。
食料自給率100%にして餓死者などは出現するはずもない国にした?
では生活習慣病で死ぬような生活習慣を植え付けてみては、どうだろう?
独立戦争後、平和憲法を定めて永世中立国にした?
でも好戦的な隣国が、色んな国と抱える紛争が、あるだろ?
自国の兵隊としてしか生きられない好戦的な国民を傭兵として出して
世界平和のために戦わせて名誉の戦死をさせてみては、どうだろう?
その死神が初対面で語る所、曰く
「一定数の魂が誕生させる生命の予備として必要なんですよ
そのために我等、死神は魂を回収しています
生き物は、いつか死ぬ
それは当たり前の事だし死から逃れられる生き物はいません
” 自分だけは長く肉体を維持する魂でありたい
できるなら、他の魂に永遠に近い時間、賛美される存在となりたい ”
そういった生存欲求とか承認欲求とかいうものがありますが
それとは逆の欲求
” 自分以外の肉体を滅ぼし魂だけの存在に戻したい
できるなら、他の魂は誰にも知られず消える存在に堕としたい”
という生存・承認欲求の逆、抹殺・存在消去欲求?
とかを抱える存在が発生するものです、何故か?
光があったら闇が発生するように
何事にも逆の概念は必ず発生するものですよ
そして必要なのは そのバランスというものです
同じ神として理解できるでしょう?
我々、死神の逆で、誕生を司る神も存在します
ですが彼等を語る人間は希少でしょう?
何故か? 死は必然で不思議で脅威で誰にも訪れます
そして死を回避する方法を人間は見つけておらず
死んだあとの魂が、どうなるかも人間には理解できていない
だから死神が存在するものとして語られるのです
誕生神について語る人間が少ないのは何故か?
最近では人間の誕生は人間がコントロールできていますから
もはや不思議な存在でも、なんでも、ありません
まあ魂が何故に宿るのかは人間に理解できていませんが
誕生神が、今、現在も果たしている責務と言えば
どの魂を人間世界に送るかを決めるくらいですからね」
そんな感じで最後には逆の仕事をする誕生神の悪口
『まあ、なんだろうな。
一柱だけじゃ手が足りなくて、数柱で働いているから
競争しているってのは理解できるし
負けたく無くて仕事熱心なのは、わかったけど
たとえば、あそこの国とか
誕生神も死神も仕事熱心で働き者って事になってるよね
いっぱい誕生するけど、いっぱい死んでいるからね
それで当たり前に、なってるからね?
でもさ、おかしくないか?
あんな平均寿命が短いのが当たり前なのってさ?
我の国を、あんな国みたくしたくないんだよね』
そんな感じで突き放すと
「いやー、でも現世で肉体を持つ魂が、魂だけで彷徨う数を上回ると・・・
我等に仕事をして欲しいと思うように成ると思いますけどねぇ?
まあ、今に、わかりますよ。グェヘヘヘェヘ。また来ますね」
そうして帰っていく。仕事熱心なので、しょっちゅう訪れてくる。
それに比べて誕生神の方は、ずいぶんと事務的だ
「去年は結局これだけの誕生数でしたからー
じゃあ、だいたい今年は、これくらいの魂に肉体を与えるって事で」
という感じで、一年に一回だけ、やってきて
一年分の手続きをするだけで帰っていく
めっちゃ、ビジネスライク、ドライ、熱意とか何も無し
まあ、そういう神なのだろう
一国の小国神とだけに時間を使ってらんねーよ
って感じなのが丸見え
これは、これで、なんだかなーって感じがするけれども。
・・・
ある程度、国が発展すると、人口が増え無くなってきた
子育てをして生きるより、子育てに充てる時間とか金とか
色んな事を自分のために使いたい。
一生をともにする家族なら配偶者だけでいい
どうせ子供は親離れして、老後は夫婦だけで過ごすなら
子育ては大変だから、やりたくない
子供の教育費用や生活費を負担する
経済力を20数年も維持する自信が無い
そんな感じの考えが広がり
なるべく家族は大勢いた方がいい
子供、孫、その配偶者と一族を増やしたい
人数を増やせば、その内なんとか成るに違いない
という楽観的な感覚が消えていく
これは少しマズイのではと誕生神に
「何か神託を授けた方が良いですか?」
と聞いてみた
『いや、そういうもんじゃないの? 仕方ないよ
自分が子孫に誇れる存在に慣れなかった魂は
子供と一緒に幸せな人生を生きるイメージとか抱えられないし
実際の所、子供が不幸になるだけなのを自覚するし
幸せにする自信も無くしてしまったら
自分までで一族を終わらせたくなるだろうね
それは仕方無いんだよ。そういうもんだ
無理やり変えようとしても、無駄だし無理
不幸な魂が肉体を得て地上に増えるより
幸福な魂だけが肉体を得て地上に存在した方が
どこの国でも、そうだろうけど幸福度は高いし
国内も荒れたりスラムが発生したりしないよ?
そうだろ?』
はい、そうですね。と頷いて終了。
・・・・
しばらくすると少子高齢化が進んで
国内にいるのが高齢者だけになって
有能な若者が国外に出かせぎに行くようになって
国全体が前世での過疎農村のように、なった。
国内企業は人件費削減の競争だけを繰り広げ
ある程度の所得を得たいのなら
海外で働けるように、仕事のある国の言葉を覚えて
その国の商習慣を学んで職業能力を高め
稼ぐしか方法が無くなり
国内には
老人介護施設や終末医療病棟施設
そこで働く、この国より過酷な人件費削減競争で
人件費の相場が安い国から来ている出稼ぎ労働者
後はAIが管理する
ロボット農場やロボット水産物養殖場、ロボット工場
そのAIとかロボットとかを製造販売、保守しているメーカー
どんどんと人海戦術とか労働者国民の人数が
少なくても国が成りたつ環境に変化していった。
そして、ますます
死神は忙しくなっていき、誕生神は暇になっていった。
という所まで少子高齢化がエスカレートしたあたりで
全体神が怒鳴り込んできた
「なんで放置して、何もしないんですか?」




