コロナからの復活
コロナ騒動で、何度も警察からの呼び出しで、迷惑をかけられたので、ゲストハウス星空は、9月から翌年3月一杯までの半年間、予約サイトを全て閉めて、宿泊客を断ることにした。
その間、2人は、他県に旅行に行くことも出来ず、ゲストハウスの薪集めや、薪割り、傷んでいるところの修理など、少しでも、ゲストさんが快適に過ごせるように、改良していった。
いよいよ4月1日からは、再び、予約サイトをオープンにして、ゲストさんを受け入れる体制にして、チェックインには必ず、人数確認と、注意事項を説明して、1棟貸し切りでの再開に漕ぎつけた。
しかし、日本政府では、相変わらず外国人の受け入れは拒否していたので、ゲストハウスも、もっぱら日本人だけで、しかも、1棟貸し切りと言う事で、金額も少し高くなるので、宿泊客グループもまばらで、細々と営業をしていた。
それでもやっぱり、8月の夏休みシーズンは、連日予約で一杯になり、8月が終わると、今までの賑やかさが嘘のように、まるで潮が引いたような静かさになっていった。
チェックインには、昭と華の2人で挨拶をして、注意事項を説明していったので、それ以降、以前の様な、警察に通報されることは無くなった。
それでも、日本人の宿泊マナーは、最低で、8月夏休みのグループ使用には、掃除に行くと、浴室には、女の子の使用済みの、つけまつ毛や、使用済みのコンタクトが、至る所の浴室の壁に貼られていたり、ゴミ箱には、生理の跡が付いた生理用品が、別の紙に包まれることもなく、そのまま捨てられていたり、さすがに昭も、目を背けたくなり、華と交替してもらったりしていた。
「酷いわねー、恥ずかしくないのかしら?親の顔が見てみたいわね!」
華も呆れて、「これから先の日本が思いやられるわ。」と言うセリフが増えていった。
そんな時には、夏休み中だと言うこともあり、裏のビーチにも、一般人が、テントを張って、BBQを楽しみ、泳いだりしているが、夕方になり、皆んなが帰った後には、ゴミが散乱していて、BBQのコンロを、そのまま捨てて帰って行ってたり、飲んだビール瓶を割って、そのまま放置していたり、BBQが終わった後の火のついた炭を、そのままにして、上に砂をかけてるだけの状態だったり、酷い時には、子供のオムツを変えた汚物が入ったオムツが、そのまま海に捨てられていたり、酷い状態になっている。
ゲストハウスの子供達が、裸足で海岸に行くと、割れたビール瓶で足を切ったり、消えていない炭で火傷をしたりする可能性があるので、昭達は、夏休み期間中は、毎日、海岸清掃をするのが日課になっていた。
外国人ゲストさんは、朝の散歩の時には必ず、海岸のゴミを拾って
「こんなに綺麗なビーチを汚してはダメだよ。」と言いながら、一杯のゴミを拾ってくれる。
それに比べて、日本人の美しい物を守ると言う考えが、外国人とかけ離れている事に、ゲストハウスを始めて、初めて、マナーの違いに驚かされることになっていた。
そんな細々営業も、翌々年の6月から、外国人団体客の受け入れで、徐々に、予約も増えて来た。
その内に、しまなみ海道を自転車で渡る。と言うパンフレットが、色々な国でも紹介されて、その年の10月には、政府が、一般外国人観光客も全て受け入れる対応を示したので、大島にも多数の外国人が、訪れるようになった。
コロナ前から行われていた、2年に1度の一大イベントで、今治から尾道までのしまなみ海道の車の通行を全て通行止めにして、自転車だけで渡るイベント、(サイクリングしまなみ)も再開されて、ゲストハウスにも、多くのゲストさんが宿泊するようになった。
そのイベントは、1日限りのイベントで、日本全国は勿論、外国からの申し込みもあり、今治市内は勿論、その周辺の宿泊施設は、何ヶ月も前から予約で、宿が取れない状態になっていた。
当然、ゲストハウス星空にも、早くから大阪からの4人のグループの宿泊が決まっていて、前日早くには到着して、ゲストハウスの庭でバーベキューをしたいの言うので、用意をして、待っていた。
そこへ、「こんにちは、お世話になります。」と言って現れたのが、爺さんばっかりの4人組。
昭は、驚きのあまり、思わず、「えっ、尾道まで走るんですか?」と尋ねると、「当たり前田のクラッカー」と、古いギャグを言いながらら「ワシらは、こう見えても、まだまだ元気や。73歳と、78歳2人と、この人なんか、80歳やで。どや、凄いやろ。」と言うので、「イヤイヤ恐れ入りました。凄いわ。」「そりゃそうや。しょっちゅう自転車に乗ってるし、この80歳の爺さんなんか、今だに、公園の鉄棒で、大車輪やってるんやで。昼間にやってたら、人がぎょうさん集まって来るさかい、夕方にやってるんやけどな、夕方には、高校生が部活からの帰りに集まって来て、皆んな凄いなぁ、言うて驚くんやけどな、この爺さん、お前らも頑張ったら出来るようになるんやから、頑張れよ!と言うて、ジジイが高校生に教えてるんやで。」すると、その爺さんが、「そりゃあ、毎日の努力も必要やで。毎日の犬の散歩に、両足に1kgずつの錘を付けて、1時間歩いてるんやから。仕舞いには、俺が犬を引っ張って帰ってるわ。ガッハッハッ」そう笑って、持って来た荷物を見ると、車の中には、クーラーBOXに、ビールや日本酒、肉などが一杯入っていて、「明日があるさかいに、今日は、少なめや。そやけど、ええ、冥土の土産になるんとちがうか?」そう言って、宴会の準備を始めた。
「えっ、車はどうするんですか?」「車はアンタ、尾道まで自転車で行ったら、自転車を置いといて、バスで又今治まで帰って来て、尾道まで、自転車を取りに行くんや。」と、平気な顔で言い放った。
翌日、昭達夫婦が、橋の上で、まだか?まだか?と、手作りの旗を持って応援に行くと、最後尾に、やっとやって来た。昭達の顔を見ると、沿道に近づいてきて、「早めにスタートしたんやけどな、途中で、ヘルメット忘れてもうて、駐車場まで取りに行ったら、おそうなってしもうたわ。ホナ。」そう言って、慌てて走り去った。
横を見ると、華もポカンと口を開けて驚いていた。




