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不器用な悪徳令嬢の追放先ライフ~冷酷だと誤解されていた私、辺境で魔物も懐くスローライフ始めます~

作者: 東郷 ヒロ

「氷の悪徳令嬢、リリアーナ・フォン・ヴァイスブリック公爵令嬢が、また何か企んでいらっしゃるわ」


「ええ、あの冷たい微笑み…きっと良からぬことよ」


王宮の夜会、その華やかな喧騒の中心から少し離れたバルコニーの入り口。聞こえよがしな囁きに、リリアーナは小さくため息を漏らした。


白いレースの手袋に包まれた指先が、緊張で微かに震える。銀糸の刺繍が施された豪奢なドレスは、彼女の白皙の肌とアイスブルーの瞳を際立たせ、近寄りがたいほどの美しさを醸し出している。しかしそれがかえって「氷の」という不名誉な冠を強固にしているのだった。


極度の人見知りであるリリアーナは、大勢の人間が集まる場では常に言葉数が少なくなり、表情もこわばってしまう。それが他者には冷酷さや傲慢さと映るのだと頭では理解していた。


さっきも、病弱な妹のためにようやく手に入れた薬草の効能について侍医に詳細を伝えようとしたのに、緊張のあまり言葉が途切れて詰問しているかのように誤解されてしまった。善意は空回り、悪意だけが勝手に育っていく。そんな日常だった。


ふと視線を感じて顔を上げると、婚約者であるアルフォンス王子が眉間に皺を寄せてこちらを見ている。その隣には桜色のドレスに身を包んだ男爵令嬢ルクレツィアが心配そうに、しかしどこか王子を煽るような絶妙な表情でリリアーナに視線を送っていた。


ルクレツィアはその可憐な容姿と巧みな話術で王子の心を掴み、リリアーナの「悪行」とされるものを巧みに王子へ吹き込んでいる張本人だった。アルフォンスもまた、リリアーナの真意を汲み取ろうとはせず、ただルクレツィアの言葉に耳を貸すばかりだった。


その数日後、事件は起きた。ルクレツィアが階段から「突き落とされそうになった」と泣き叫び、その場に居合わせたリリアーナが犯人として糾弾されたのだ。もちろんリリアーナは何もしていない。むしろ、よろけたルクレツィアに咄嗟に手を差し伸べようとしたのだが、その手は虚しく宙を掻いただけだった。


「リリアーナ・フォン・ヴァイスブリック!貴様との婚約はこれにて破棄する!そして度重なる悪行、ルクレツィアへの傷害未遂、並びに王家への不敬の罪により、貴様を王都より追放し、魔境と名高い『忘れられた辺境』への永世蟄居を命じる!」


王宮の大広間。集められた貴族たちの前で、アルフォンス王子は冷徹な声でリリアーナの罪状を読み上げた。リリアーナは全身の血が凍りつくような衝撃に襲われた。弁明しなければ。しかし、極度の緊張と絶望で喉が詰まり、声が出ない。必死に何かを訴えようと見開かれたアイスブルーの瞳は、周囲には反抗の色としか映らなかった。硬直した表情は、反省の色なしと断じられた。


「何か申し開きはあるか」という王子の言葉にも、リリアーナはただ唇を震わせるだけで一言も発することができなかった。


その沈黙を肯定と受け取ったのか、アルフォンスは軽蔑の色を隠さずに言い放つ。


「…連れて行け」


衛兵に両腕を掴まれ、引きずられるようにしてリリアーナは王宮を後にした。最低限の荷物と共に揺れる馬車の中で、彼女はただ静かに涙を流すしかなかった。


王都から数週間、粗末な馬車に揺られてたどり着いた「忘れられた辺境」は、その名の通り人の気配も希薄な荒涼とした土地だった。リリアーナに与えられたのは、森の入り口にぽつんと建つ打ち捨てられて久しい石造りの小屋。壁は崩れかけ、屋根には穴が開き、およそ人が住める状態ではなかった。


最初の数日は絶望と孤独感に打ちひしがれた。けれど、いつまでも泣いているわけにはいかない。幸い、幼い頃から病弱な妹のために読み漁った書物の中には、薬草学や古い時代の生活の知恵に関するものも多かった。貴族令嬢としての華やかな生活とは無縁だった知識が、今は唯一の武器だった。


リリアーナはまず、小屋の修繕から始めた。近くの森で比較的丈夫そうな枝や蔓を集め、屋根の穴を塞ぎ、壁の隙間を泥で埋める。食料は森で採れる木の実や食べられる野草、そして罠を仕掛けて捕らえた小さな獣。夜は心細さと獣の遠吠えに怯えながらも、わずかな灯りを頼りに薬草を乾燥させたり、次にすべきことを考えたりして過ごした。


そんな生活がひと月ほど続いた頃、彼女は森の奥で初めて「魔物」と呼ばれる存在と遭遇した。


最初に現れたのは「モルガロン」という全身を硬い苔むした毛皮で覆われた大きな獣だった。鋭い爪と牙を剥きだし、低い唸り声をあげる姿はまさしく魔物と呼ぶにふさわしい。リリアーナは恐怖で身が竦んだが、咄嗟に以前読んだ古文書の一節を思い出した。


「魔獣モルガロン、勇猛なるも臆病。縄張りを侵す者に牙を剥くも、真の敵意なき者には深追いせず」


リリアーナは動かず、ただ静かにモルガロンを見つめた。すると威嚇を続けていたモルガロンは、やがて不審そうに鼻を鳴らし、ゆっくりと森の奥へ姿を消した。その去り際の瞳の奥に、攻撃性よりも強い警戒心と、どこか怯えのような色が見えた気がした。


次に遭遇したのは「ピクシーフライヤー」と呼ばれる小型の飛行魔物だった。不気味な羽音を響かせて群れで現れるため人々からは恐れられていたが、リリアーナが観察する限り、彼らはただ好奇心旺盛なだけのようだった。彼女が小屋の周りで作業をしていると、遠巻きに様子を窺い、時折キラキラ光るものを見つけると素早く持ち去っていく。その行動は、まるで悪戯好きな子供のようだった。


「私と同じかもしれない……」


リリアーナは、ふと思った。見た目や噂で一方的に恐れられ、本当の姿を理解してもらえない。それは、王都で「氷の悪徳令嬢」と呼ばれていた自分と重なった。そう思うと、魔物たちへの恐怖心は少しずつ薄れ、代わりに奇妙な親近感が芽生え始めていた。


リリアーナは魔物たちを刺激しないよう、彼らの縄張りを尊重し、静かに自分の生活を続けた。森で薬草を摘む時も、魔物の気配を感じれば迂回し、決して深入りはしない。そんな日々の中で、彼女は彼らの生態を少しずつ理解していった。モルガロンは特定の種類の花の香りを好み、月夜には岩の上でじっとしていること。ピクシーフライヤーは、夜になると発光する苔の周りに集まってくること。


ある雨上がりの朝、リリアーナは小屋の近くで羽を怪我して飛べなくなっている小鳥を見つけた。周囲には魔物の気配はない。彼女はそっと小鳥を保護して小屋へ連れ帰ると、持っていた薬草をすり潰して傷口に塗り、手製の包帯を巻いてやった。数日後、元気になった小鳥がリリアーナの手から飛び立っていくのを、森の木陰から一頭の若いモルガロンがじっと見つめているのに彼女は気づかなかった。


またある日、リリアーナは自分の小屋のすぐ近くの茂みに、魔物たちが嫌う毒性の植物が群生しているのを見つけた。このままでは好奇心旺盛なピクシーフライヤーやモルガロンの子供が誤って口にしてしまうかもしれない。彼女は知識を頼りに、慎重にその毒草を根こそぎ取り除いた。作業を終えて顔を上げると、いつもより少しだけ近くの木の枝で、数匹のピクシーフライヤーが彼女を見下ろしているような気がした。


辺境には小さな村も存在した。しかし、村人たちはリリアーナを「王都を追われた悪女」「魔性の女」と噂し、遠巻きに避けるばかりだった。彼らにとって、リリアーナは森の魔物と同等か、それ以上に恐ろしい存在らしかった。その視線は王都の貴族たちと何ら変わらずリリアーナの孤独感を深めたが、同時に「ここでは誰の目も気にせず生活できる」という奇妙な安堵感ももたらした。


王宮の華やかなドレスもきらびやかな宝石も、ここにはない。あるのは、土と草の匂い、風の音、そして遠くから聞こえる魔物たちの息遣い。それは決して快適とは言えない生活だったが、リリアーナは偽りの仮面を被り続ける必要のないこの辺境での日々に、ほんの少しだけ息苦しさからの解放を感じ始めていた。まだ見ぬ未来への不安は大きかったが、同時に、ここでなら何か新しい自分が見つかるかもしれないという淡い期待も抱き始めていたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


王都では、リリアーナが追放されてから数ヶ月が経つうちに目に見えて様々な綻びが生じ始めていた。彼女が「氷の悪徳令嬢」として冷静かつ的確に処理していた細々とした案件――貴族間の些細な領地争いの仲裁、王宮内の予算の不正利用の牽制、さらには将来起こりうる災害への地道な備蓄計画など――それら全てが滞り、混乱は日増しに大きくなっていった。


アルフォンス王子に取り入った男爵令嬢ルクレツィアは、その可憐な容姿と甘い言葉で王子を篭絡するには長けていたが、実務能力は皆無だった。山積する問題には見て見ぬふりをし、自身の贅沢三昧や取り巻きの貴族たちへの利益誘導に明け暮れるばかり。王子の寵愛を盾に権力を振りかざす彼女の姿に、民衆はもちろん、良識ある貴族たちからも不満の声が上がり始めていた。


そんな中、アルフォンスの古参の側近であり、リリアーナの冷静な判断力を密かに評価していた宰相補佐のグスタフは、彼女の追放劇にいくつかの不審な点を見出して内密に再調査を開始した。


すると、驚くべき事実が次々と明らかになる。


ルクレツィアがリリアーナを陥れるために買収した侍女の存在、リリアーナの筆跡を巧妙に真似て書かれた偽の手紙、そして決定打となったのは、ルクレツィアが共犯者である侍女に宛てた手紙だった。そこには、リリアーナを「悪徳令嬢」に仕立て上げて王子との婚約を破棄させ、自らがその座に成り代わるための詳細な計画が得意げな筆致で綴られていたのだ。


全ての証拠を突きつけられたアルフォンスは愕然とした。自分がどれほど愚かで、浅はかだったのか。ルクレツィアの可憐な仮面の下に隠された、底知れぬ悪意と野心。そしてリリアーナの言葉少なさや硬い表情は極度の緊張と不器用さからくるものであり、その奥には真摯な心と国を思う深い洞察力があったことを今更ながらに悟ったのだった。彼の胸を刺したのは激しい自己嫌悪とリリアーナに対する申し訳なさ、そして取り返しのつかないことをしてしまったという絶望的な後悔だった。


一方その頃、リリアーナの辺境の地でも事件が起こっていた。辺境の小さな村で原因不明の熱病が流行り始めたのだ。


王都からの薬師など期待できるはずもなく、村人たちは次々と倒れ、絶望の色を濃くしていた。その報せを聞いたリリアーナはいてもたってもいられず、自ら薬草を携えて村へ向かった。彼女は小屋に籠り、不眠不休で薬草を調合し、古文書の知識を頼りに治療薬の開発を試みた。


その過程で、森の奥でしか見られない特殊な苔が熱病に効果がある可能性に気づく。しかしその苔はモルガロンの縄張りの近くに自生しているものだった。リリアーナは躊躇したが、村人たちの苦しむ顔を思い浮かべ、意を決して森の奥へと足を踏み入れた。


案の定、彼女は一頭の巨大なモルガロンと遭遇する。しかしそのモルガロンは威嚇するでもなく、ただ苦しそうに横たわっていた。よく見るとその傍らには小さな子供のモルガロンが同じようにぐったりとしており、熱病に侵されているのは明らかだった。


「あなたたちも、苦しいのね……」


リリアーナは恐怖よりも憐憫の情に動かされ、持っていた試作の薬湯を水筒から器に移し、ゆっくりと子供のモルガロンの口元へ差し出した。親モルガロンは警戒しつつも、リリアーナの必死の形相と、子供が僅かに薬湯を口にしたのを見て静かに様子を見守っていた。


数日後、リリアーナが完成させた治療薬は村人たちだけでなく、モルガロンの親子をも快方へと向かわせた。この一件で村人たちはリリアーナを「辺境の聖女」と呼び、心からの感謝と信頼を寄せるようになった。そしてモルガロンたちもまた、リリアーナが自分たちの敵ではないことをはっきりと理解したのだった。


穏やかな日々が戻り始めた矢先、新たな脅威が辺境を襲う。王都の混乱に乗じ、職を失ったならず者たちが徒党を組んで、略奪を目的に辺境の村へ押し寄せてきたのだ。村の貧弱な自警団では到底太刀打ちできない。


絶体絶命の状況で、リリアーナは知恵を絞った。彼女は村人たちに指示を出し、森の地形を利用した罠を仕掛けさせ、そして自らは森の奥へと向かった。彼女が助けを求めたのは魔物たちだった。


言葉は通じない。しかしリリアーナの必死の身振りと、村へ向かう盗賊団の姿を指し示すことで、モルガロンたちは状況を理解したようだった。彼らの縄張りが荒らされることへの怒りもあったのだろう。ピクシーフライヤーの群れもリリアーナの周囲を騒がしく飛び回り、何かを察したように森の入り口へと向かった。


盗賊団が村へなだれ込もうとした瞬間、森の木々が不気味に揺れ、地響きと共にモルガロンたちが雄叫びをあげて姿を現した。その巨体と威圧感に盗賊たちは度肝を抜かれ、さらに上空からはピクシーフライヤーの群れが目潰しのように襲いかかり、混乱を極めた。リリアーナの指示で村人たちが放った石や丸太も効果を上げ、盗賊団は散り散りになって逃げ去っていった。


この共闘は人間と魔物の間にあった最後の壁を取り払い、確かな絆を育んだ。リリアーナの勇気と知恵、そして魔物たちの意外な優しさと力強さは、辺境の地に新たな希望をもたらしたのだった。


やがて「辺境の聖女、魔物をも従え悪を討つ」という噂は旅の商人たちの口を通して、遠く王都のアルフォンス王子の耳にも届くこととなる。それは、彼の後悔の念をさらに深めるには十分すぎる報せだった。


アルフォンス王子はグスタフが集めた動かぬ証拠を貴族たちの前で公表し、男爵令嬢ルクレツィアの罪を断じた。ルクレツィアは最後まで見苦しく嘘を重ねたが、もはや誰も彼女の言葉を信じる者はいなかった。彼女は全ての爵位と財産を剥奪され、最も厳しい戒律で知られる北の修道院へ幽閉されることが決定した。その美しい顔は絶望と憎悪に歪み、誰からも同情されることなく王宮を追われた。


アルフォンスは国民と貴族たちの前で、自身の失態とリリアーナへの誤解を深く謝罪した。そしてリリアーナの名誉を完全に回復し、彼女に直接詫びるため、そして何よりも今の国に必要なのは彼女の力だと痛感し、自ら辺境へ赴くことを宣言した。


数週間後、アルフォンスは供を連れて辺境の村を訪れた。彼がそこで見たのは、想像を絶する光景だった。


粗末ではあるが清潔な小屋の前で、村の子供たちに薬草について教えるリリアーナの姿。その傍らには巨大なモルガロンがおとなしく座り込み、まるで番犬のように彼女を見守っている。空にはピクシーフライヤーが楽しげに舞い、村人たちはリリアーナに親愛のこもった笑顔を向けていた。


かつての「氷の悪徳令嬢」の面影はなく、そこには穏やかで、自信に満ちた、そして何よりも幸せそうなリリアーナがいた。


アルフォンスは馬から降り、リリアーナの前に進み出ると深く頭を下げた。


「リリアーナ嬢……いや、リリアーナ。私は取り返しのつかない過ちを犯した。君の真実を見抜けず、心無い言葉で君を傷つけ、不当に追放してしまった。どんな言葉も許しを請うには足りないだろうが、どうか謝罪を受け入れてほしい」


そして、彼は続けた。


「君の名誉は回復された。ルクレツィアは断罪された。どうか王都へ戻ってきてほしい。今の我が国には、君の知恵と公正な判断力、そしてその優しさが必要なのだ。私を、そして国を支えてはくれまいか」


リリアーナは静かにアルフォンスの言葉を聞いていた。そのアイスブルーの瞳は、以前のような怯えや緊張の色はなく、澄み切った湖面のように穏やかだった。


「アルフォンス殿下。お言葉、痛み入ります。そして私の名誉を回復してくださったこと、感謝いたします」


彼女はゆっくりと頭を下げた。そして顔を上げると、はっきりとした口調で言った。


「ですが、王都へ戻ることはできません。私の居場所は、もうここなのです。ここでは、私は私らしく、ありのままでいることができます。私の言葉足らずを辛抱強く聞いてくれる人々がいます。私の不器用な善意を、まっすぐに受け止めてくれる友人たちがいます。そして……見た目は怖くとも、心優しき隣人たちがいますから」


リリアーナの視線の先には少し離れた場所で心配そうにこちらを見守るモルガロンと、彼女の肩にそっと舞い降りた一匹のピクシーフライヤーがいた。


アルフォンスはリリアーナの揺るぎない決意を悟った。彼女の瞳には、王都にも、そして自分にも、もはや何の未練もないことがはっきりと映し出されていた。彼は言葉を失い、ただ深くうなだれることしかできなかった。彼女を失ったこと、彼女の真価に気づけなかったことへの後悔は、生涯彼の胸を苛むであろう消えない傷となった。


「……そうか。君の意思は、わかった」


絞り出すような声でそれだけ言うと、失意のまま王都へと帰還した。


王都に戻ったアルフォンスは以前とは見違えるほど真摯に国政に取り組むようになった。リリアーナを失った教訓を胸に、人の言葉の裏にある真意を見極めようと努め、公正な判断を心がけた。しかし国が困難な問題に直面するたび、彼は自問せずにはいられなかった。「もしリリアーナがここにいてくれたなら……」と。


一方リリアーナは辺境の地で、村人たちや魔物たちと共に穏やかな日々を送っていた。彼女の薬草学の知識は村の医療を発展させ、農業技術の指導は土地を豊かにした。魔物たちとの共存は、辺境を独自の文化が花開くユニークな場所へと変えていった。かつて「忘れられた辺境」と呼ばれた地は、いつしか「聖女と魔物の楽園」として遠くの国々にまでその名を知られるようになる。


リリアーナはもう「氷の悪徳令嬢」ではなかった。彼女は不器用ながらも自分の力で幸せを掴み取り、周囲の人々(と魔物たち)に愛される、強く優しい女性へと成長していた。


人は見た目だけでは測れない。その奥にある真の心に触れるには、恐れずに向き合い、理解しようとする気持ちが何よりも大切なのかもしれない。そして一度失った信頼と機会は二度と戻らないこともあるのだということを、遠い王都の玉座で星を見上げる一人の王が生涯をかけて噛み締めていくのだった。

最後までご覧くださいありがとうございます☺

よろしければ他の作品も見ていってくださいね(^^)

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