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Hobby mistrick -reawake-  作者: Tenia
第一章 不穏な変容
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壊れる前の音

さて、動き出したはいいものの、この趣味(ウェポン)を意図的に使うのは、あのリンプリザードを切り撮ったときのみだ。

切り取る条件や能力の詳細すら把握していない。


そして、先ほどは大して気にしていなかったが、この部屋はとてつもなく広い。

今は比較的固まって行動しているが、もし3体が警戒し、バラバラに行動し始めた瞬間、安全圏内からでは切り取れない可能性が出てくる。

つまり、1体からも認識されないように全員を画角に抑える、もしくは、姿を気づかれずに1体ずつ切り抜く必要がある、というわけだ。


加えて、一番の問題は対象が"やつ"らだということだ。

スカープライノーサウスは平均体長6m,体重3トンを誇る最上級の魔敵(イニミコス)である。

おそらく、この部屋は壊されないように設計されているだろうが、僕はかすれただけで跡形もなくなるだろう。


幸いなことに現段階では、どの個体からも認識はされていない。

今できることとしては、どの個体からも気づかれないように趣味(ウェポン)の能力を最大限試し、切り抜く条件を把握していくしかない。

ただ静かに覚悟を研ぎ澄ませ、僕はレンズを覗き込む。

この位置だと、1体の前足を含む半身くらいしか収まりきらない巨体だが――


…カシャッ。


…やっぱりだめか。

予想はついていたが、この趣味(ウェポン)は対象の姿全体を収めなければ、切り抜くことができないのだ。

だって、写真を撮るとき、対象物を全部写真に入れてしまうだろう?

そういうところまで細かいのがこの趣味(ウェポン)システムだ。


何も切り取られなかった代わりに、切り抜く条件と、そしてもう一つ、別の部分で成果を得た。

この部屋に入った扉のすぐ横にある別の部屋の中に、モーラボールがたくさんいることに気づいた。

それを見つけた瞬間、僕はこの指令の本当の目的を悟った。


それは、僕の趣味(ウェポン)であるカメラの能力を引き出させること。

モーラボールはたとえ能力を使わずとも必死になれば倒せる程度の魔敵(イニミコス)である。

つまり、今やるべきことはあのモーラボールを倒しまくって経験値を稼ぐことだ。

しかし、このカメラに写すと、倒した判定にならず、経験値が上がらないということを前回までに学んでいる。


だったら――


決意を固め、櫻良のいる扉の向こうに向かった。

そして櫻良がいる廊下に出たところで、先ほど気づいた隣の部屋について確認する。

しっかりと、廊下からの扉で繋がっている、ということと、部屋の上部がガラス製である、ということがわかった。

これがわかったところで、今回の作戦は全てが上手くいくと確信した。


「…櫻良、今からすぐ隣の部屋に入る。部屋の上が透ける作りになってるから、この廊下からでもカメラのフラッシュが見えると思う。

このフラッシュを合図にするから、これが見えたら回復料理を扉から入れてほしい。」


「な、なにをするの…?」


「経験値を稼ぎにいく。危ないかもしれないから、念のため、長時間扉を開いたり、顔を中に入れたりしないようにね。」


「わかった…!気を付けてね?」


「うん、ありがとう。」


そう言って、僕は自分に言い聞かせるように、

"やってやる"

そう思い、扉をくぐった。

モーラボールについて

"やわらかいボール"のような形状の魔敵(イニミコス)です。

まあいわゆるスライムのような扱いの魔敵(イニミコス)ですね。

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