原初はこの瞬間に
「うん…。ごめん、全っっっ然追いつかないけど、きっとそうなんだろうね…。
従うしか方法はなさそうだし。」
櫻良に内容を伝え終わったのち、案の定指令の通知が届いた。
「…今、指令が届いた。ひとまず動こう。内容は、っと。
<魔敵の殲滅>…?
それくらいなら、別に僕に任せる必要なんてないだろうに。」
「んーお兄ちゃんならとりあえず写真に収めたら終わるし、そういう意味で捕らえられたんじゃないかな?こう…なんていうか…お掃除屋さんみたいな…?」
「…だったらいいけどな。」
ぴこんっ。
今度はアリエボにメッセージ通信が届いた。
「えっとなになに…『指令中のみ牢屋の鍵を開ける。終わったらまた入ってくれ。さもなくば…...』」
…これ以上読み進めても意味がなさそうな気がしたので、読むのをやめて櫻良に向き直った
「…なんか漫才でもしてるみたいだね?」
「…確かに向こう側に敵意がなさそうにも感じるな。でも、警戒はしておくに越したことはない。
ひとまず魔敵を倒しに行こう。」
僕と櫻良は指定された場所に移動し始めた。
目的地はこの研究所らしき場所の中にあるらしい。
だとしたら、殲滅に重きが置かれているというよりは、趣味の性能を試されているという気がしてならない。
今はどちらにせよ、動かない手はないが。
目的地である研究所の中の一室、かなり大きな部屋にたどり着いた。
扉をくぐり、1歩進む。
目の前に広がる光景を見て絶句した。そして点と点がつながった。
「いや…まじかよ。」
「あんなのもカメラに収まるのかな…?」
機械的なものが部屋の外にあるが、内部はがらんどう。ただ、広いだけの無機質な空間が広がっている。
その中心には、あのスカープライノーサウスが3体、黙然と居座っていた。
あれは、誰もが知っている、最上位の魔敵である。
実物を見るのは初めてだが、知っている生体とは少し違う、奇妙な点がある。
3体ともその額に奇妙な紋様を刻んでいる、ということだ。
これが何を意味するかはわからないが、危険を肌で感じ取った。
「櫻良。部屋の外で待っていてくれ。カメラに写しさえすればなんとかなると思う。
回復が必要になる場合は想定したくないが、もしその時がくれば回復どころではないだろう。
一応、必要になったら合図を送る。扉を少しだけ開けて、投げ込んでくれ。」
「いや、そんな…危な…。――いや、そうだね。お兄ちゃん、信じてるよ。」
互いの信頼を視線で見せ、アイコンタクトでお互い行動を始める。
僕は3体から見た死角へ、櫻良は扉の外へと、同時に動き始めた。
スカープライノーサウスについて
角が"するどいサイ"です
通常では、危険区域として指定されている場所にしか生息していないような、最上位の魔敵です。
基本的にはパーティを組み、40~50人がかりでようやく1匹倒せるかどうかといった強さを誇ります。
さて、才斗はどのようにこの3体を倒すのでしょうか。