己を捨てる日
本作Hobby Mistrickは、自分の趣味を具現化・具体化し、それを用いて戦うことのできる世界を描いた作品です。
あまり情報を出さない状態で話を進行させ、段々と説明がなされていくという進め方で進行致しますので、そこも是非お付き合いいただけますと幸いです。
不定期投稿ですので温かくお見守り下さい。
なお前書きは一話のみ、記入致します。
後書きは書きたいことがあるときのみ、書くこととします。
「すみません…。僕はもう写真を撮らないと決めてしまったので…。」
「えぇー!?才斗くんに撮ってもらった写真、すっごく映りよくなるのにー!!」
「写真家としての道は諦めることにしたんです。あれからカメラを向けることが怖くなってしまって…。」
「――そうだよね、仕方ないね!才斗くんだったら他の道が見つかるよ!!きっと!
掘り返しちゃってごめんね…。」
「あ、いえいえ!お気になさらず!」
「僕もそうだと信じてます。ありがとうございます。それでは、お先失礼します。」
申し訳ないという気持ちで心身が埋め尽くされる。
教場に行ってこんな思いをするなんて考えていなかった。自分のことしか考えていなかったということを指摘されたようで居たたまれない気持ちになる。そしてそれらを感じている全てが浅はかな自分に無性に腹が立つ。
しかし、今後どのようなことが起こっても、カメラを人に向ける勇気が出ることはないだろう。
もし今その勇気が手元にあったとて、なんとなく撮る気にはなれない。
それもそのはずで、今日は僕のもう一つの心臓とも言える"こいつ"との別れの日だと考え、カメラを提げてきた。
だからだろう。
もうお別れだーなんて、いっちょ前に言ってるくせに、趣味である寄り道をし、
綺麗な景色を見かけては、その空間を切り取りたいだなんて考えになるんだから、皮肉な話だ。
なんて呑気なこと考えてたらいつの間にか家についてしまった。
えっとー、ん…?
なんで忘れてしまったんだろう?
晩ご飯の買い出しに行くのを完全に忘れていた。あまりこういうことはないのだが。
まあ心身ともに疲れているんだろう。少し道を引き返さなきゃいけないんだが、仕方がない。
こういうのをすっぽかしたら櫻良に怒られるのが目に見えているので、ちゃんと引き返すことにしよう。
15分程度引き返したところで、Aマートにようやく着いた。
正式には、Aマート、アーネストは真剣、熱心などという意味だ。
名前通り、競合他社と本気でぶつかっている大型スーパーマーケットといったところである。
よって周辺にいる誰もが活用するため、ここに来ると大体知り合いに遭遇する。
だから意識的に今日は避けてしまったのかもしれないな。
さて、そんなことを考えながらも買い出しを終えたところで、1つの出入口が騒ぎになっていた。
Aマートは沢山の人が活用するため、”良くないやから”や騒ぎが起こることも珍しくない。
こういう日にこそ、なぜかこういうのに巻き込まれるのは神様のイタズラかと思ってしまう。
別の出入口に向かおうとしたそのとき、聞き馴染みのある声が飛び込んできた。
「もーーーー!!!いい加減にしてーーーー!!!」
――ん?これって櫻良の声か?