お姉ちゃんと先輩
『愛』を題材とした掌編小説です。
私は、世界で一番可愛くてかっこいいお姉ちゃんが大好きだ。
そんなお姉ちゃんが恋をしているらしい。
一体どんな相手なのか、気になって仕方がない。
しばらく調査を続けると――うーん、あのおばあちゃんの荷物を持ってあげてるし、野良猫に餌まであげてる。
「……優男だなあ、典型的な。」
悪くない、むしろ良い人だ。だけど、なんだか面白くない。なんでだろう。
そのままなんだかんだで一週間くらい、ストーカーみたいに観察している私。毎日帰り道に偶然を装ってついてみたり、図書館で横に座ってみたり……。
「何してるんだろう、私。」
そろそろやめようかな、お姉ちゃんと先輩の邪魔になるかもしれないし。
帰宅し、ベッドに倒れ込む。
「先輩に任せてもいいのかな……?」
でも、先輩は私の友達にもやたら馴れ馴れしいし、女たらしだし。
「それに、私にも優しかったし……いや、それが証拠でやっぱり女たらし!」
自分の中で一人言を続けながら、リビングから「ご飯だよー」という声が聞こえてきた。
「って、もうこんな時間?」
ご飯を食べて、お風呂に入って寝る準備。
布団に入っても、心のモヤモヤが止まらない。眠れない。
気づけばスマホを手に取り、指が勝手に動いていた。
『私が先輩に対して抱いているこの感情はなんですか』
そう質問箱に投げかけてしまっていた。
しばらくして一件の回答が返ってきた。
『「相手の好きなものを好きになる」という愛の感情の一つではないでしょうか』
先輩はお姉ちゃんが好きな人だから、私がお姉ちゃんを好きなら、好きになっても不思議じゃない。
……そうなんだろうか?
それとも――
思わずスクロールした先にあったのは、こんな一文だった。
『もしくは、貴方がその先輩に恋をしているのではないでしょうか』
望んでいた答えのはずなのに、知りたくなかった答え。
胸がギュッと苦しくなり、私はその夜、なかなか眠れなかった。
語彙力図鑑という本を使って作品を投稿し、面白い作品が描けるように頑張ります。