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敵にしてはいけない公爵令嬢

作者: 黒羽曜

婚約破棄?もちろんこちらからですよ?

隣国から留学中の王女と公爵令嬢の会話が中心のお話です。

 王立学園には広々としたカフェがあり、室内の他、テラス席も設けられている。


 室内では、陽当たりがよい窓際席に、隣国から留学中のライア王女殿下とソフィア・アイゼンバーグ公爵令嬢が座っており、心地よい風が入るからと窓を開けていた。


「ねえ、ソフィア。テラスにいるのは私の従兄弟のマシューかしら?」


「はい。マシュー第二王子ですね。その隣にいるのは私の婚約者のダリル・ノーマン侯爵令息です」


「他にもいるけど、あれは側近?なぜ一人の女生徒を囲んでいるの?」


「あの女生徒の名はサラ・ブライト男爵令嬢。皆様の大切な方のようですよ?」


「まぁ、皆さん幸せな頭なのね」


 周囲の生徒は例の第二王子御一行の話かと、興味津々で聞き耳を立てている。


「そうなのです。この前も王子の婚約者に向かって皆で『お前』だの『謝れ』など、あの令嬢なんて王子の婚約者であるオリビア・スコット公爵令嬢に向かって『さん』呼びですよ?なぜ爵位が上の者にそのような口が利けるのか謎です。それにあの令嬢、『学園ではぁ〜、みんながぁ平等なはずなのにぃ酷いですぅ〜』とか訳のわからないことも口走ってましたしね」


(((頭の悪そうな話し方がそっくり!!!)))


「学園が平等なはずないじゃない」


「そうなのです。「学園は皆が平等に(・・・)学べる場(・・・・)」であって、身分は平等ではないのです。そもそも社交界の縮図と言われてますのに、何を勘違いしているのか。それもわからないような者との婚約なんて解消ですよ。すでに父が動いております」


 何事もないようにゆっくりと紅茶を含む。



 その言葉に辺りが一瞬静かになる。


(((すでに父が動いております!?)))




 察しの良い生徒はすぐに動いた。

 これは事件だ!アイゼンバーグ公爵令嬢の婚約解消だけでは済まない。スコット公爵家も動くぞ!いや、既に動いているはずだと。


 第一王子の母は王妃である。広大な領土を持つ帝国の姫君だった。後ろ盾はしっかりしているが、第一王子には婚約者がいない。


 第二王子の母は側妃で実家は伯爵家。王国に不慣れな王妃を支える為側妃として迎えられたのに欲が出た。だが後ろ盾としては弱い為、側妃から是非にと願われ公爵令嬢を婚約者に据えた経緯がある。その公爵家が後ろ盾となってやっと第一王子と並べたのに。


 第二王子派は戦慄しただろう。政局が変わるぞと。

 むしろ、なぜ今まで気がつかず呑気に過ごしていた?

 この国の二つの公爵家を敵に回すなんてあり得ないのに!


 側近達の婚約者が騒いでいないのもおかしい。

 元々スコット公爵家の派閥なのだ。

 当然婚約解消もしくは婚約者の挿げ替えに動いているのは間違いない。


 ソフィアの婚約はダリルが王子の側近になる前に整っていた。どこにも属さず静観していたアイゼンバーグ公爵家だが、今回の事は流石に見過ごせない。


「そもそも父が大人しくそのままにしている理由がないのです。私を溺愛していると公言しているのに」


「アイゼンバーグ公爵は何と?」


「『馬鹿な第二王子と一緒に共倒れする必要はないよね』と」


「本音は?」


「『うちの可愛いソフィアを差し置いて男爵令嬢に現を抜かすなんてありえないよね。婿入りの立場なのにさ、あの小僧は我が家を乗っ取りたいのかな?ん〜、もうあいつ要らないよね。うん、決めたよ!破棄はもちろんだけど、死んだ方が良かったと思えるくらいに遊んであげよう!あぁ、今から楽しみだな』って嬉々としていましたね。お可哀想に、父は全力で遊ぶつもりのようです」


(((公爵の話し方は軽いのに、内容が重いっ!)))


「まぁ。公爵夫人は止めないの?」


「止めませんね。むしろ侯爵夫人が口煩かったので、遊び相手を提供して差し上げました。これからお茶会では肩身が狭くなるでしょうね」


「肩身が狭くなる程度で済まないのでは?男爵家はどうするのかしら?」


「原因はあの男爵令嬢ですが、そこはスコット公爵家に任せるそうです」


「スコット公爵家は解消で良かったのかしら」


「スコット公爵も父ほどではありませんが、家族を大事にされている方なのです。真面目で控えめなオリビア様は心配かけまいとご相談されていなかったようですから、今回の件を知った公爵は大変なお怒りだったようです。相応の報復はあるでしょう。それに父が何やら入れ知恵していたようですし」


「叔父様はどう対処されるのかしら?留学中にこんな楽しいものが見られるなんて、こちらに来てみて良かったわ」


「陛下はこの機会に使えない駒を捨てられるのを喜んでいらっしゃるのでは?それが妃であろうと息子であろうとも」


「ライア様、ご覧ください。あそこにいる者たちの最後の笑いを。きっと明日からは笑えなくなるでしょうから。今くらい幸せな時を過ごさせてあげましょう?」


 口角をあげ微笑む姿は、何も知らない者が見ればとても美しい。だが、知るものからすれば恐怖?

 ライア王女は肩をすくめる程度だが、周囲の生徒は震え上がり、絶対にアイゼンバーグ公爵家だけは敵にしないと心に刻んだ。




「それで?ライア様はこちらに嫁ぐ気になりまして?」


「そうね。ソフィアがいると心強いし、ギルバートがね、たぶん離さないと思うのよね」


「ふふ、諦めますか?ギルバート第一王子の愛は重そうですものね。今回の事もどこかで関わっているような気もしますし」


「私のために要らぬ者は排除したと?」


「あり得なくはないでしょう?拒否をすれば恐ろしい対象になりますが、それを受け入れれば最上に甘い蜜となりますよ」


「最上に甘い蜜ね。・・・ならば私は蝶とならねばね」


 覚悟を決めたライアの表情を確認したソフィアは満足気に


「我が国に幸運が舞い降りますわ」


 静かに席を立ち見事なカーテシーをする。


「私、ソフィア・アイゼンバーグは生涯ライア様にお仕えいたします」







 ―――――――――


 おまけ話


「お嬢。本当に俺でいいの?」


「あら。我が家の家令の息子で侯爵子息なのよ。お父様自ら選んだのに逃げる選択肢なんてあるわけないでしょ。それとも私では不満なの?」


「ちょっ!誰が聞いてるのかわからないんだから、そんな物騒な事言わないでくれる!?お嬢に不満はないよ。でもずっとお嬢には婚約者がいて俺は仕えるもんだとばっかり」


「諦めてお父様のおもちゃになりなさい」


「いや!そこは私の婚約者になりなさいじゃないの!?」


「ふふふふふ」


「ちょっと!お嬢、否定して!?ねぇ否定は!?」


「ふふふふふふふふ」


「お嬢ーーーーーー!!!」

 新しい婚約者の侯爵令息ケインは、公爵家を守る者として幼少期を辺境で過ごし鍛えられました。今の口調はその頃の影響ですが、公爵の「面白い」の一言で許されています。

 もちろん公の場では切り替えます。

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