90話:魔術師の攻撃
レンデとエリスが魔術師の言葉に耳を傾けていると、突然、魔術師がにやりと笑いながら、懐から黒いオーブを取り出した。オーブは不気味な光を放ち、その光が部屋の中を照らすと、魔術師はもごもごと呪文を詠唱し始めた。
「えっ?」エリスが驚きの声を上げると、レンデは状況を即座に理解した。魔術師が魔法陣を展開する準備をしていることを見抜いたのだ。
魔術師の詠唱が終わると、壁、天井、床に複雑な魔法陣が浮かび上がり、部屋全体を覆っていった。その魔法陣は漠然とした輝きを放ち、どんどん強くなる光がレンデとエリスの目に映った。
「しまった!」レンデは瞬時に判断し、エリスを守るために行動を起こした。彼はエリスを素早く突き飛ばし、部屋の入り口へと押しやった。「エリスさん!」
エリスは驚きながらも、レンデの力に従い、扉の方へと転がり込んだ。レンデも続いて、部屋の外に逃げるために後を追った。その瞬間、魔法陣が発動し、部屋全体が閃光と共に包まれると同時に、壁、天井、床が激しく振動した。
部屋の外で、エリスは魔法陣に囲まれた部屋の様子を伺い続けていた。部屋に取り残されたレンデが一瞬のうちに黒い結界の膜に包まれた。彼の体は魔法陣のに巻き取られ、黒いゼリーのようなものに包まれていった。それは徐々に薄い膜へとかわり、レンデの体を完全に覆ってしまった。