88話:王の間からの探索
レンデは王の間に踏み込んだとき、王ルーメルアの亡骸と周囲の混乱に圧倒された。だが、彼が最も気にしていたのは、黒いフードの魔法使いや検査官らしき人物が見当たらないことだった。
「どうしてあの魔法使いや検査官がここにいないんだろう?」レンデは不安そうに呟いた。王の亡骸を見つめながらも、心の奥底に潜む疑念が拭えなかった。
エリスがレンデの傍に近づき、彼の表情を見守りながら尋ねた。「レンデ、何か気になることでもあるの?あなたが不安そうな顔をしているわ。」
「ああ、エリス。あの黒いフードの魔法使いや検査官がどこにも見当たらないんです。もしかしたら、逃げたのかもしれません。」レンデは心配を隠せずに答えた。
エリスは少し微笑んだ。「それなら、さっさと周囲を探してみましょう。何か手がかりが見つかるかもしれないわ。」
レンデとエリスは王の間を出て、周囲の部屋を調べることにした。レンデは各部屋を慎重に確認しながら進んでいったが、特に怪しいものは見当たらなかった。焦りが彼の心を占めていた。
(レンデ、心を落ち着けて周囲をよく見てごらん。ここには隠し通路があるかもしれない。)ヘルミオの声が、優しい口調でレンデの頭の中に響いた。
「隠し通路?」レンデは驚き、興奮を隠し切れずに尋ねた。「どこにあるんですか?」
(「王の間から近い通路の奥に、古くからの秘密が隠されている。そこには螺旋階段が隠されているといわれている。」)ヘルミオの声は、長い経験を積んだ高齢の魔術師のように穏やかで、信頼感を与えた。
レンデはエリスに目を向け、彼女が真剣な表情で頷いたのを確認した。「エリス、隠し通路があるとおもうんです。探してみましょう。」
エリスは少し驚いた様子で微笑みながら言った。「そうね、あなたの言う通り。私も一緒に探してあげるわ。」
通路の奥に向かいながら、レンデは壁のレンガを慎重に調べた。すると、突然レンガが奥にずれて、壁が扉に変わる感覚があった。
「これが…隠し通路ですね。」レンデは感嘆しながら言った。「エリス、見てください。」
エリスが扉の先に広がる螺旋階段を見て、興味深く見つめた。「ここには何かが隠されているわね。気を付けて進みましょう。」
レンデとエリスは共に螺旋階段を上り始めた。階段の壁には古びた魔法の紋章が刻まれており、その中に何か重要なものが隠されていると感じた。