82話:出発の決意と魔法の力
エリスとレンデは、出発の準備が整ったことを確認し、家紋入りの鎧を身につけた。鎧はフォン・クライン家の紋章が刻まれており、威厳と誇りを示していた。エリスは兄への思いと家族への責任を胸に、鎧の冷たい感触を感じながら深呼吸した。
「レンデ、これで準備は整ったわね。」エリスは鎧の上から軽く手を叩き、決意を新たにした。
レンデはエリスの姿を見守りながら、彼女に微笑んだ。「エリス、完璧だよ。これからの道のりは厳しいかもしれないけど、一緒に乗り越えよう。」
エリスは小さく頷き、馬に跨る準備を始めた。屋敷から連れてきた警備兵たちも、エリスとレンデの後ろに並び、それぞれの馬に乗り込んでいた。彼らの装備も整い、警戒心を強めながら、出発の合図を待っていた。
「出発します。」エリスは、警備兵たちに向けて声をかけた。
レンデは、馬の鞍にしっかりと手を置きながら、「よし、エリス、僕たちは『驚速』の魔法を使って、早く王都に到着しよう。」と話しかけた。
エリスはうなずき、魔法の準備を整えた。彼女の魔法の力はまだ完全には安定していなかったが、RANK4の実力で「驚速」の魔法を使いこなすことができるようになっていた。
レンデはエリスと共に魔法の呪文を唱え、馬たちに力を注いだ。馬たちの体が青白い光に包まれ、地面を蹴るたびに、風のような速さで駆け出した。
「これで、王都までの距離も短くできるわ。」エリスは興奮した声で言った。「これで、早掛けで3日の距離を2日以内に短縮できるわ!」
馬たちは、まるで空を飛ぶような速さで進んでいった。周囲の風景がぼんやりと流れ、地面が一瞬で遠ざかる感覚が広がった。エリスはそのスピード感に胸を躍らせながらも、心の中で戦場に思いを馳せていた。
警備兵たちも、その速さに驚きながらも、エリスとレンデにしっかりと馬で従い、周囲の警戒を怠ることなく進んでいった。
「これで、少しでも早くお兄さんの元に到達できるわね。」エリスはレンデに声をかけた。
レンデは頷きながら、「はい、エリス。目指すは王都。安全を確保しながら、何とか無事に辿り着こう。」と答えた。
馬たちの速さは、目を見張るほどであり、彼らの旅は順調に進んでいた。