80話:戦火の中の帰還
二週間の鍛錬を終え、エリスとレンデは火山の祠を後にして、山を下りる決意をした。彼らの心には、新たな力を得た安堵感と、再び戦乱の渦中に戻ることへの不安が交錯していた。彼らの目的は、エリスの領地の様子を確認し、今後の行動に備えることだった。
山を下りる途中、エリスとレンデは西に向かい、エリスの領地に向かう道を選んだ。彼らは、街や村で情報を集めるため、商人や住人に話を聞くことにした。エリスは、久しぶりに見る故郷の風景と、その周囲の情勢がどうなっているかを心配していた。
「このあたりの状況はどうなんだろう…」エリスが少し不安そうに言った。
「ここまでの話では、戦闘はまだ続いているみたいだよ。」レンデは周囲を見渡しながら応えた。「町の人たちも、王都が逆包囲されているって噂してる。」
エリスとレンデは、町の広場に立ち、通行人や商人たちと話をしながら情報を集めた。商人の一人が、いかにも知っているように話し始めた。
「最近の噂で聞いたんだが、王都の周りに辺境の貴族たちが集まって、合同軍を編成してるらしい。」商人が目を輝かせながら言った。「さらに、東部国境の守備部隊と合流して、リーヴァルト王国軍を包囲してるんだってさ。」
「本当に?それは大変だ。」エリスは驚きの表情を浮かべた。「つまり、戦闘はまだ収束していないということね。」
「そうだよ。なんでも、リーヴァルト王国軍の防御が強固で、簡単には突破できないらしい。戦況は長引いてるみたいだ。」商人は肩をすくめて言った。
村の住人からも同様の情報を得た。戦火の影響で、辺境貴族の合同軍とリーヴァルト王国軍との間で、激しい戦闘が続いているというのだ。戦争の渦中にあって、王都の包囲はかえって厳しくなっているようだった。
「戦況がこれほど厳しいとは…」レンデが考え込んでいた。「エリスの領地の状況がどうなっているのか心配だね。」
エリスは決意を新たにし、領地に向かう道を急ぐことにした。「私たちの領地の様子を確認しないと。もし何かあったら、すぐに対策を講じなければ。」
やがて、エリスとレンデは無事にエリスの領地に到着した。領地内は比較的静かで、住人たちは戦争の影響を受けながらも、なんとか生活を続けている様子だった。エリスは安堵の表情を浮かべ、領地の現状に安心した。
「大丈夫そうね…」エリスはほっと息をついた。「少しでも平穏が戻っていて良かった。」
レンデも同様に安心し、エリスの肩に手を置いた。「これからどうするかは、もう少し様子を見ながら決める必要があるね。戦況はまだ流動的だから、慎重に行動しよう。」
エリスは頷き、再び静かな日常を取り戻した領地で、今後の対策を考える決意を固めた。