69話:戦火の中の守護者たち
エリスとレンデは、フォン・クライン家の領地内で生活を整えながらも、心の中では戦争の影響を深刻に受け止めていた。エリスの父、アルフレッド・フォン・クライン家当主は高齢になり、主要な政務からは5年前に引退していた。その間、彼はエリスの教育に専念し、直接的な戦闘や軍の指揮には関与していなかった。
領地内での安堵感の裏には、戦争の波が迫っている現実があった。エリスの家系が王家の系統であることから、戦争に負ければ捕縛や投獄の危険が高い。家族の命と領地を守るためには、早急に対策を講じる必要があった。
エリスには、今年18歳になる兄、アレクサンダー・フォン・クラインがいる。アレクサンダーは若いながらも軍事訓練を受け、領地の防衛を担当していたが、兵力の不足が頭を悩ませていた。人口5000人程度の領地では、兵を500人集めるのが限界であり、防衛には不安が残った。
ある日の午後、エリスとレンデは領地内の庭で会話をしていた。エリスは真剣な表情で言った。「レンデ、これからの計画について話したいの。」
レンデは興味深く耳を傾けた。「どうしたんですか?」
「父が引退してから、私たちには戦争の影響が直撃する可能性が高いの。」エリスは続けた。「領地の防衛が急務なの。具体的には、隣接するランズ領との連携が必要です。私たちの領地では兵力が限られていて、防衛には不安が残るの。」
「なるほど。」レンデは頷きながら考えた。「ランズ領との連携を進めるためには、どうすればいいのでしょう?」
「父が以前からランズ領の領主とは関係があったので、信頼を得られるはずです。」エリスは説明した。「でも、私たちが行動を起こさなければ、時間がありません。」
その夜、アレクサンダー・フォン・クラインがレンデとエリスのもとにやってきた。彼は真剣な表情で話を切り出した。「エリス、レンデ、今夜の話し合いが重要だと思って呼びました。父はここでの防衛を任せてきましたが、私たちだけでは限界があります。」
「アレクサンダー、わかっているわ。」エリスは応じた。「ランズ領との連携が鍵だと思うの。でも、どうすればうまくいくかまだ確信が持てない。」
「それなら、まずは私がランズ領に行って、直接交渉をしてきます。」アレクサンダーは決意を込めて言った。「私が信頼を築くことで、連携の可能性を高めることができるかもしれません。」
レンデはその提案に賛成し、アレクサンダーの計画を支持した。「それが良いでしょう。アレクサンダーが交渉に行けば、より具体的な情報を得ることができるはずです。私もサポートします。」
「ありがとう、レンデ。」アレクサンダーは感謝の意を示した。「では、私がランズ領に出発する準備をします。」
翌日、アレクサンダーはランズ領に向けて出発し、エリスとレンデはその間に領地の防衛準備を整え始めた。エリスは家族と領地の未来を守るため、全力で取り組む決意を新たにした。
アルフレッド・フォン・クライン家当主は、エリスとレンデに最後のアドバイスを与えた。「エリス、レンデ、私たちの未来はあなたたちにかかっています。ランズ領との交渉がうまくいくことを祈っています。」
エリスは父の言葉に頷き、レンデと共にランズ領との連携を確実なものにするため、出発の準備を整えた。戦争の影響を受ける前に、可能な限りの防衛策を講じるため、彼らは迅速に動き出す決意を固めた。