50話:窓からの秘策
カフェの個室で、エリスとレンデは集めた情報をもとに次の行動計画を練っていた。しかし、レンデの心の中には、賢者ヘルミオからの新たな提案があった。ヘルミオは、王宮内での調査のために別のアプローチを提案してきた。
「レンデ、現状を鑑みると、王宮内への潜入は直接的な方法では難しいかもしれない。だが、まだ他の方法がある。」ヘルミオの声がレンデの思考の中に響いた。
「どのような方法ですか?」レンデは興味深く聞いた。
「私の案としては、再び王の間を目指すことを検討する必要がある。ただし、先ほどのネズミによる潜入は調査官の訪問で失敗したため、今回は小鳥を使う方法が良いだろう。小鳥ならば、王宮内に直接接近するのに適している。」ヘルミオは落ち着いて説明した。
レンデはその提案を受け入れる決意を固め、エリスに説明した。「王宮に再び潜入するために、カワラヒワに憑依するのがいいとおもうんだ。」
エリスは興味津々でレンデを見つめ、少し驚いた様子で言った。「カワラヒワ? それはなかなかユニークな選択だね。でも、どうやってそれを実行するの? ネズミのときは失敗しちゃったし、今回はどうするの?」
レンデは微笑みながら答えた。「うん、今回はカワラヒワを使うつもりなんだ。カワラヒワなら窓から直接王の間に近づけるし、目立たずに済むだろうって思って。前回の失敗から学んで、今回はしっかり準備するよ。」
エリスは軽く首を傾げながら、ちょっとませた感じで言った。「それ、賢い選択かもね。でも、カワラヒワに憑依するって言っても、いろいろとリスクがあるでしょ? ちゃんと気をつけてね。」
レンデはエリスの言葉に安心感を覚えつつ、友達としての信頼を示すように答えた。「もちろん。できるだけ安全に進めるつもりだよ。君が見守ってくれるし、何かあったらすぐに連絡するから。」
エリスは頷きながら、ちょっと優越感のある笑みを浮かべた。「了解。君が成功するようにサポートするから、安心してね。王の間での情報収集がうまくいくことを願ってるわ。」
エリスの寮の部屋に入ったレンデは、まずその部屋の雰囲気に驚きと感心を隠せなかった。部屋の中は、淡いピンクやラベンダー色のインテリアで整えられており、小さな花柄のカーテンが窓から垂れ下がっていた。部屋の隅には、ぬいぐるみが並べられた棚があり、絵本が整然と並ぶ本棚も見える。ベッドは、ふわふわのクッションやかわいらしい布団で飾られていた。
レンデは部屋の中に足を踏み入れた瞬間、感嘆の声を漏らした。「うわぁ、エリスの部屋って、すごく女の子らしいんだな…」
彼は部屋の隅々を見渡しながら、柔らかい光が差し込む窓辺に近づき、ふわふわのカーペットの上に座り込んだ。エリスの部屋には、特有の香りと、可愛らしいインテリアが漂っていた。その可愛らしさに、レンデは思わず少し照れくさい気持ちになった。
その時、エリスはレンデの反応に気づき、頬を少し赤らめながら、少し恥ずかしそうに微笑んだ。「あ、えっと、ありがとう。部屋がちょっと女の子っぽいから…なんだか恥ずかしいけど。」
レンデはエリスの様子に気づき、優しく笑いながら言った。「うん、すごく素敵だよ。すごく温かみがあって、見てるだけでほっこりする。」
エリスはその言葉に、さらに赤くなりながらも、嬉しそうにうつむいた。「そ、そう言ってくれると嬉しいわ。少しでも落ち着ける場所になればいいなと思って。」
レンデは、エリスのサポートのもと、次のステップへ進む決意を新たにしながら、ベッドの上に横たわった。「さて、気を取り直して…カワラヒワに意識を移す準備をしないとね。」
レンデはエリスの寮の部屋に戻り、エリスのベッドに横たわった。彼は心の中でヘルミオと連絡を取りながら、カワラヒワに意識を移す準備を進めた。エリスは部屋の外で見守ることにし、レンデが安全に作業できるよう配慮していた。
「それじゃ、いよいよカワラヒワに憑依するよ。」レンデはエリスに向かって穏やかに言った。
エリスは微笑みながら、「気をつけてね、レンデ。君が無事で成功するように祈ってるわ。それじゃ、また後でね。」と見送った。
レンデはエリスの言葉を胸に、心の中でヘルミオと協力しながら、カワラヒワに意識を移す儀式を始めた。彼の意識は徐々に小さなカワラヒワの体に乗り移り、羽ばたく感覚が広がっていった。