46話:調査官(査問官)
調査官の足音が静かに響く中、レンデの部屋のドアが開かれた。調査官は中に入ると、まず目に入ったのはベッドに横たわるレンデの姿と、その側に控えているエリスだった。エリスは、心の中で冷や汗をかきながら、調査官の目をじっと見つめた。
調査官の服装は、威厳と洗練を兼ね備えたもので、彼の地位を一目で示していた。深い青のローブは、光を受けると微細な金の糸が織り込まれて輝き、彼の動きに合わせてしなやかに揺れていた。そのローブの裾には、銀の刺繍で描かれた複雑な模様が施され、まるで魔法の紋章が刻まれているかのようだった。
ローブの胸元には、金色のバックルが付けられており、その中央には王国の紋章があしらわれていた。これは、彼が王宮の公式な調査官であることを示す証しだった。調査官はそのローブを締めるベルトを腰に巻き、細長いポケットがいくつも付いた外套のような装飾も施していた。ポケットの中には、様々な書類や道具が入っているようで、その重厚感が調査官の肩に一層の圧力を加えていた。
また、彼の頭には、黒い縁取りが施された深い青の帽子が乗せられており、帽子のつばは広めで、顔を隠すように影を落としていた。帽子の縁には、金の刺繍が施され、彼の権威をさらに強調していた。
足元には、磨き上げられた黒のブーツが履かれており、その革はしっかりとした作りで、踏み込むたびに静かな音を立てていた。全体として、その服装は高貴さと厳粛さを漂わせ、調査官の立場と役割を完璧に体現していた。
調査官は部屋を見渡し、エリスの姿に目を留めた。「この部屋には、貴族の娘がいるようだが…」彼は疑念の色を浮かべながら、エリスに問いかけた。「君は何をしている?」
エリスは深呼吸をして、気持ちを落ち着けようとした。レンデの体を守るために嘘をつくしかないと決めていた。彼女は一歩前に出て、落ち着いた声で答えた。「こちらの生徒、レンデが熱を出しているので、看病をしているだけです。授業を休んでいるのもそのためです。」
調査官はエリスの言葉をじっくりと聞きながら、彼女の目をじっと見つめた。エリスの目には動揺の色がなく、冷静さを保っているように見えたが、調査官はその言葉の真意を見定めようとしていた。
「そうか…」調査官はしばらく沈黙し、エリスとレンデを交互に見比べた。エリスの説明に納得した様子はなく、まだ何か不審な点を探っているようだったが、レンデの体調に関する情報が一つの理由として受け入れられたようだった。彼はやがて、深く頷きながら部屋を出る決断をした。
「よろしい、しかしこの部屋で何が行われているか、しっかりと確認しておく必要がある」と言い残して、調査官は部屋を後にした。
エリスは部屋のドアが閉まるのを見届け、ほっとした息をついた。心臓がまだ早鐘のように打っていたが、レンデの体が無事であることを願いながら、再び静かに見守り続けた。調査官が部屋を出て行った後の静けさが、彼女の中に安堵感をもたらしていたが、次の行動が待たれていた。