4話:政争と死
ルーメリア王国の王宮は、厚い雲に覆われた空の下で、深い陰鬱さに包まれていた。古びた石造りの壁が幾世代の歴史を刻んできたこの場所は、今やその静寂が不安の色に染まっていた。王位継承を巡る政争が激化し、王宮内での緊張感は高まる一方だった。
王宮の一角、まばゆいばかりの豪華な図書室の奥に、ヘルミオ・カスティウスは静かに座っていた。長い白髪が肩に垂れ、目尻の深いシワが彼の年齢と疲れを物語っていた。かつて数々の冒険を経て、偉大な魔法使いとして名を馳せた彼も、今では王宮の筆頭魔法士としてその力を振るうことは稀であった。彼は、穏やかな日々を望みつつも、国の未来に対して内心の憂いを抱えていた。
「ヘルミオ様、失礼します。」若い弟子の声が図書室に響いた。彼の目の前には、少し緊張した面持ちの青年が立っていた。「第1王子殿下からお呼びです。」
ヘルミオは顔を上げると、ゆっくりと目を細めた。「第1王子か…分かった。すぐに行く。」
弟子が去った後、彼は杖を手に取り、古びたローブを整えた。その杖は長い年月の間に磨耗し、魔法石の輝きも失われていたが、彼にとっては大切な相棒であった。
王宮の廊下を歩きながら、ヘルミオは重い足取りで思考に耽った。国の政争は日々深刻化し、王宮内での暗闘が絶えなかった。第1王子と第3王妃の間で繰り広げられる権力闘争が、ヘルミオの心にも暗い影を落としていた。
彼が王子の部屋に到着すると、豪華な装飾が施された部屋の中で、第1王子が椅子に腰掛けていた。王子は若干の疲労を見せているものの、その眼差しは鋭く、決意に満ちていた。
「ヘルミオ、来てくれてありがとう。」第1王子は彼を迎え入れ、微笑んだ。「最近の政争に関して、あなたの意見を伺いたい。」
「政争か…。」ヘルミオは深いため息をついた。「このような事態は、国を分裂させるだけです。冷静な対話が必要です。」
王子は頷きながらも、目に浮かぶ不安を隠しきれなかった。「それはわかっているが、状況がそれを許さない。第三王妃の側近たちが一歩一歩、力を増しているのだ。もし我々が動かなければ、国が崩壊する恐れがある。」