39話:王城の奥深くでの出会い
通路を進んでいくレンデとエリスは、静かな空間に足音を響かせながら進んでいた。突然、通路の先に一人の男性が現れた。彼は長身で黒い衣装をまとい、高貴で神秘的な雰囲気を漂わせていた。
「こんなところでお目にかかるとは、エリス様。」男性は、エリスに向かって低く丁寧な口調で言った。その声には驚きと尊敬が込められていた。
エリスは一瞬驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻した。「先生、あなたがここに?どうして?」エリスの目には、幼少期の記憶が一瞬で甦ったようだった。
「私がここにいる理由は後ほどお話ししますが、今はあなたたちに危険が迫っています。」男性は落ち着いた口調で続けた。「私の名前はアーデルハルト。かつてあなたの家庭教師を務めた者です。」
レンデはアーデルハルトを見上げながら、エリスが指示を受けている様子に興味を持っていた。エリスはアーデルハルトの紹介をレンデに向かって行った。「レンデ、彼はアーデルハルト先生。私の幼少期の家庭教師で、現在はしがない魔塔主として活動しています。」
アーデルハルトは頷きながら、優雅に言葉を続けた。「私の役割は、魔法と魔力の研究に関わることですが、ここであなたたちが何をしているのかは分かりません。しかし、この場所には留まるべきではありません。すぐに城から出るべきです。」
「でも、どうして?」レンデは質問しながらも、アーデルハルトの言葉に対する警戒心が消えなかった。
王宮内での緊張感が漂う中、レンデとエリスはアーデルハルトの警告を受けて、慎重に通路を戻っていた。アーデルハルトの言葉には、深刻な現実が込められていた。
アーデルハルトが通路での別れ際に話した内容を振り返ると、彼の説明はさらに重要な意味を持っていた。王宮内では、闇の魔術師たちの影響が増しており、その力が広がってきているというのだ。アーデルハルトはその力に対抗するために全力を尽くしていたが、現状ではその力を抑えることができなくなっていると告げていた。
「レンデ、私たちが行ってはいけなかった理由がわかったわ。」エリスが低い声で言った。彼女の顔には、真剣な表情と不安が混じっていた。「アーデルハルト先生が言っていたように、王宮内の闇の力は、私たちの力では到底対抗できないわ。」
「確かに、あの力を見くびってはいけない。」レンデは頷きながら答えた。「私たちがもしその力に触れたら、私たちの命に関わるかもしれない。」
王宮内の闇の魔術師たちは、通常の魔法使いとは比べ物にならないほどの強力な力を持っており、またその力が最近急速に拡大していた。闇の力が王宮内に広がることで、王城の安定も脅かされている状況だった。
アーデルハルトは、レンデとエリスの若さと経験の不足を踏まえ、王宮内の闇の魔術師たちと直接対峙するのは非常に危険であると判断していた。彼らの力では、闇の魔術師たちの勢力に対抗するのは到底無理であり、命を落とす可能性が高いと警告していたのだ。
「アーデルハルト先生が言っていた通り、私たちが王宮内に触れるのは自殺行為だわ。」エリスは深く息をついた。「今はこの危機をどうにかして回避する方法を考えなければならない。」
レンデは頷きながら、エリスに向かって言った。「そうだね。私たちはまず、アーデルハルト先生の言葉を真摯に受け止めて、他の方法を考えよう。王宮内の状況を無理に探ろうとするのは、今は得策ではない。」
二人は慎重に王宮の外に戻り、アーデルハルトの指示を守りながら、次の行動を計画することにした。