37話:発見
レンデは、エリスが心配しているのを見て、心が痛んだが、正直に話すわけにはいかなかった。「ありがとう、エリス。でも、今回は一人でやらなければならないんだ。君には心配をかけたくない。」
「レンデ、私も行くわ。」エリスは真剣な声で言った。
レンデは驚きと困惑の表情を隠せなかった。「エリス、それは無理だよ。これは私の個人的な任務なんだ。」
「だからこそ、私が行くべきだと思う。私も協力するわ。任務がどれほど危険か分からないけれど、レンデを一人で行かせるわけにはいかない。」エリスは強い決意を込めて続けた。
レンデは困ったように息を吐いた。「エリス、君には心配をかけたくない。これがどれほど危険か分からないし、君を巻き込みたくないんだ。」
「危険だからこそ、一緒に行くべきなのよ。」エリスは譲らず、レンデの目を真剣に見つめた。「私もリスクを取る覚悟がある。だから、行かせてほしい。」
レンデは内心で悩んだ。エリスの決意と心配に対して、自分だけでなく、彼女の意志も尊重しなければならないと感じた。
「…わかった、エリス。君がそこまで言うなら、協力してもらおう。」レンデは肩をすくめながら、渋々承諾した。「でも、君の安全が最優先だ。万が一の時は、すぐに撤退するから。」
エリスは微笑みながら、頷いた。「もちろん、レンデ。一緒に頑張ろう。」
王城の中に潜入し、祭りの賑わいを利用して進んでいたレンデとエリス。しかし、予期しないトラブルが発生した。警備の兵士たちが突然、増援を呼ぶために走り去り、王城の中は一気に警戒が強まった。
「どうして、こんなことに…」レンデは心の中で呟いた。彼の心には焦りと絶望が押し寄せていた。エリスと共に計画を立てたはずが、あっという間に状況が変わってしまい、彼の心は混乱していた。
「レンデ、どうするの?」エリスが心配そうに声をかけてきたが、その声もレンデには遠く感じられた。
レンデは冷や汗をかきながら、焦りと無力感に襲われていた。「まさか、見つかるなんて…計画が完全に狂った…どうしよう。」
彼の頭の中で、成功を信じていた計画が崩れていく様子が鮮明に浮かび上がる。彼の胸には、失敗したという深い後悔と、もうどうしようもないという絶望が広がっていた。
「私たち、どうすればいい?」エリスの声がレンデの耳に届いたが、レンデはその声を受け止める余裕がなかった。彼の心は、すでに失敗と絶望の深淵に沈んでいた。