36話:秋の収穫祭と王城潜入
秋の空気が乾燥し、涼やかな風が吹く中、王城では盛大な収穫祭の準備が進められていた。鮮やかな装飾が城内を彩り、王族や貴族たちが参加する大規模な祭りに向けた賑わいが感じられる。
レンデは、この収穫祭を利用して王城に潜入する計画を立てていた。ヘルミオと共に準備を整えた結果、彼は祭りの出店者として変装し、王城内に入り込むことに決めた。自分の変装を完璧に仕上げたレンデは、王城に向かう準備を整えた。
しかし、彼の秘密の行動が思わぬ形で露見してしまった。
レンデが特訓場に姿を見せなくなり、エリス・フォン・クラインはその理由が気になっていた。彼女は、レンデが何か特別なことをしているのではないかと感じていた。そして、ある日、彼が特訓場に現れない理由を探るために、こっそりと後をつけることに決めた。
エリスは、レンデがいつも通っていた通路を辿り、彼の行動を静かに追跡した。レンデがよく訪れる場所や、その周囲を観察しながら、彼の動きが普段とは異なることに気づいた。
「レンデ、どこに行っているの?」エリスは心の中でつぶやきながら、彼の足取りを追い続けた。
ある日、レンデが特訓の準備を整えている時、エリスはその様子を見つけてしまった。レンデは、王城への潜入準備をしている最中であり、エリスが見たものは彼が変装用の衣装や装備を整えているシーンだった。
エリスは息を呑んだ。「これって…王城に行く準備?」
彼女はレンデに気づかれないように、できるだけ静かにその場から離れようとしたが、レンデが彼女の存在に気づくのは時間の問題だった。エリスは、レンデが部屋から出てきた時に、その行動を止めるために声をかける決心をした。
レンデが準備を整え、王城に向かうために出発する直前、エリスが静かに彼の後ろに現れた。
「レンデ、ちょっと待って!」エリスの声がレンデの耳に届いた。
レンデは驚いて振り返り、エリスの姿を見つけた。「エリス、どうしてここに?」
「私、最近あなたが特訓場に現れないことに気づいていたの。だから、何をしているのか探っていたんだけど…まさか王城に行く準備をしていたなんて。」エリスは少し困惑した表情を浮かべながら話した。
レンデは内心の驚きを隠しつつ、エリスに説明しようとした。「これは…まあ、僕の個人的な事情で、少し特別な用事があって。」
「王城に?」エリスは目を大きく見開いた。「どうしてそんなことを?」
レンデは焦りを隠しながら、何とか理由を作らなければならなかった。「ああ、そうか…実は、ある人からの依頼で、王城に行くことになっているんだ。」
「依頼?誰から?」エリスは驚きの表情を浮かべた。
レンデは少し考え込みながら、嘘を続けた。「詳しくは言えないんだけど、秘密の任務なんだ。だから、君には関係ないことなんだ。」
エリスは納得できない様子で、疑いの目を向けていた。「本当にその依頼は大丈夫なの?もし危険なことなら、協力するから。」