23話:エリス・フォン・クライン
夏休みを迎える直前、レンデはいつものように特訓を終え、学校に向かっている途中だった。彼の心は未来への期待と、これまでの努力の成果に満ちていた。すると、突然、背後から声をかけられた。
「レンデ、ちょっといいかな?」
振り向くと、そこにはクラスメイトの中でも特に目立つ女子生徒、エリス・フォン・クラインが立っていた。彼女は中級貴族の家系に生まれ、13歳にしてすでにRANK3の実力を持つと言われる有力な学生だった。彼女の優雅な姿勢と整った髪は、彼女の貴族としての地位を物語っていた。
レンデは驚きと緊張の入り混じった表情で、彼女を見つめた。これまでエリスとはほとんど会話を交わすことがなく、彼女の存在が自分の世界とは無縁であると感じていたからだ。特に彼女の実力を知っているレンデにとっては、高嶺の花のような存在だった。
「え、エリスさん…どうしたんですか?」レンデはしどろもどろになりながら、彼女の前に立ち止まった。
エリスは柔らかな微笑みを浮かべながら、話を続けた。
「最近、レンデが少し変わった気がして気になっていたの。以前とは何かが違うような気がするのよ。」
ヘルミオの声が、レンデの心に静かに響いた。(エリス・フォン・クラインは実力者だ。RANK3程度の実力があるだろう。ただし、君にとっては高実力者ではあるが、過度に恐れる必要はない。)
レンデはその言葉を聞き、少し安心しながらも、実力者であることに変わりはないと感じていた。彼は一瞬の間に自分の心を落ち着けようとしたが、エリスの存在があまりにも重く感じられる。
「そ、そうですか…実は、最近特訓に力を入れていて…」レンデは口ごもりながら言い訳をし始めた。「すみません、エリスさん。実は今日も訓練があるので…」
レンデは言い終わると、緊張と焦りから来る反応で、エリスの前からすぐに走り去った。足音が校庭に響き、レンデは自分の部屋に向かって急ぎながらも、心の中でどんどん不安と混乱が募っていった。
「こんなことになるなんて…。」レンデは息を切らしながら呟いた。「エリスさんにどうしても話しかけられたくなかったわけではないのに…」
彼はそのまま自室に戻り、気を取り直しながらも、心の中でさまざまな思いが交錯していた。訓練が優先だと自分に言い聞かせつつ、エリスとの対話が心の片隅で気になって仕方がなかった。