195話:卵の部屋
レンデたちは、倒したポイズンウィーバーの残骸を背後にしながら、さらに家の奥へと進んだ。薄暗い廊下を進むと、嫌な臭いが鼻を突き、空気が一層重く感じられた。やがて、扉の向こうに広がる部屋に辿り着いた。
リュウが扉を押し開けると、全員が思わず息を呑んだ。そこに広がっていたのは、無数の卵がびっしりと張り付いた不気味な光景だった。壁、天井、床までもが蜘蛛の糸に覆われ、その糸には大小様々な卵がつけられていた。
「これは…ポイズンウィーバーの卵か?」リュウが驚愕の声を漏らした。
「まずいな…もしこれが孵化したら、大変なことになるぞ。」マークが緊張した様子で周囲を見回した。
レンデもその光景に圧倒されながらも、冷静を保とうと努めた。卵の数は尋常ではない。もし一斉に孵化すれば、彼らの手には負えない数のポイズンウィーバーが襲いかかってくるだけでなく、村中に広がって大変なことになる。
「これ全部が一気に孵化する前に、何とかしないと…」ジェシカが冷静に言いながら、魔法を準備し始めた。「でも、手を出す前に何かの対策が必要ね。少しでも刺激を与えれば、全部の卵が一斉に動き出すかもしれない。」
レンデはジェシカの言葉を受けて、慎重に考えを巡らせた。「卵を一気に焼き払うか凍らせるのが手っ取り早いが、魔法で爆発を引き起こす危険もあるな。」
「焦らずにやりましょう。ここでのミスは命取りよ。」ジェシカが風の流れを感じ取りながら、慎重に動きを始めた。
「よし、じゃあ俺が氷で卵を凍らせる。ジェシカ、風で毒霧が広がらないように頼む。」レンデは氷の魔法を手に集中し始めた。
ジェシカはうなずき、風の魔法で周囲の空気を操り始める。風が静かに渦を巻き、卵から漏れ出る瘴気を封じ込めた。
「やるなら今だ!」レンデは凍てつく氷の槍を次々と形成し、卵の塊に向かって放った。槍が卵に命中すると、冷気が一気に広がり、周囲の卵を凍りつかせた。凍った卵が次々と崩れ落ち、床に砕け散る。
しかし、その瞬間、壁に貼り付いていた一部の卵がかすかに震え、内部から孵化しようとする動きが感じられた。
「まだ全部は凍りついてないわ!動き出す前に仕留めるわよ!」ジェシカが叫び、再び強力な風を巻き起こし、未だ凍りついていない卵の糸を断ち切ろうとした。
リュウはすかさず剣を抜き、孵化しかけた卵に向かって飛び込み、素早く斬りつけた。マークも盾で残りの卵を叩きつけ、粉々にする。
「急げ、まだ終わってないぞ!」レンデは再び氷の魔法を練り出し、部屋全体を一気に凍らせようとする。
その時、天井から巨大な影が動いた。暗闇の中から現れたのは、もう一匹のポイズンウィーバーだった。しかも、先ほど倒したものよりもはるかに大きく、その紫色の毒霧が一層濃く立ち込めていた。
「なんて大きさだ…!」マークが驚愕の声を上げる。
「気をつけて!こいつは手強そうよ!」ジェシカが警告しながら、風を操り、霧の拡散を防ごうとした。
レンデは氷の槍魔法を再び発動させ、ポイズンウィーバーに向かって放ったが、蜘蛛は素早く動き、攻撃をかわした。
「こいつはただの蜘蛛じゃない…!」