193話:名のある名誉
「前金と後金、了解しました」とリュウが言い、仲間たちと目を合わせる。「我々が調査を終えたら、報酬は確実にいただけるということで、間違いありませんね?」
アルトゥールは頷き、「もちろん、私の名にかけて約束します。」
「それなら、作戦を立てましょう!」とレンデが前向きに言った。「まず、情報を集める必要があります。どの村から調査を始めるべきですか?」
アルトゥールが地図を広げて言った。「ここ、北西の村が最初のターゲットです。最近、特に多くの失踪者が出ているとのことです。君たちは、村人から情報を集めて、変異獣が潜んでいるかを確認してください。」
「わかりました。情報収集から始めます」とジェシカが答えた。「村人たちと信頼関係を築くことが重要ですね。」とリュウが補足した。
「それと、村には夜になると活動を始める変異獣がいる可能性があるので、夜間の警戒も怠らないように」とアルトゥールが警告した。
「了解しました。それでは、すぐに準備を整えて出発します」とレンデが言った。
「成功を祈っています。私も必要な支援を手配しますので、何かあれば連絡を」とアルトゥールが微笑んだ。
4人は詰め所を後にし、早速必要な道具を整え、北の村に向けて出発する準備を始めた。
村に到着すると、周囲は静まり返っていた。村人たちは不安な表情を浮かべ、何かを恐れている様子だった。彼らは慎重に村を巡りながら、情報を集めることにした。
「まずは、宿屋に行って村人たちと話をしてみよう」とリュウが提案した。「情報を得るためには、彼らと会話を交わすことが必要だ。」
宿屋に入ると、宿主の女性が彼らを見上げてきた。「お客さん、旅の方ですか?」
「はい、私たちはこの村の様子を見に来ました。最近、何か変わったことはありませんでしたか?」とレンデが訊ねた。
宿主は少し顔色を変え、周囲を見回した。「最近、夜になると村の周りで人の気配が消えることが多くて…不安です。特にあの家の近くでは…」
「どの家のことですか?」とジェシカが食い下がった。
宿主は声をひそめ、「北側の古い家です。最近、誰も出入りしていないのに、明かりが見えることがあるんです。」
リュウは仲間たちに目を合わせた。「そこが怪しいな。調査の第一歩として、あの家を確認してみよう。」
宿主は驚いた様子で言った。「行かない方がいい!あそこは…」
「大丈夫です、私たちが調査しますから」とリュウは優しく返した。
北側の古い家へ向かう途中、リュウはふと立ち止まり、仲間たちを振り返った。彼らの顔には緊張と期待が交錯している。リュウは深呼吸し、言葉を選びながら話し始めた。
「みんな、少し話をしたいことがある。」リュウの声は真剣だった。
マークが目を細めてリュウを見つめる。「どうした?何か気になることでもあるのか?」
リュウはうなずき、「今回の依頼が成功すれば、我々は国に正式に認められた傭兵団になる。傭兵団の名を授かるチャンスだ。」
「そうか、それを狙っているわけだな」とマークが頷く。「名を授かれば、他の傭兵たちからの尊敬も得られるし、大きな仕事も舞い込んでくる。」
ジェシカも興奮を抑えきれずに、「それに、国の後ろ盾がつくということよ。私たちの名はさらに広がるし、仕事もどんどん増えるはずよ。」
「待て、それって…そんなに大きな話だったのか?」とレンデが驚いたように言った。「噂で聞いたことはあるけど、詳しくは知らなかった。」
リュウはレンデに向かって説明する。「そうだ、これはただの依頼じゃない。国が我々を見極めている。もし成功すれば、名誉ある傭兵団の名を与えられ、正式に国の一員となる。」
レンデはしばらく考え込み、そして決意を固めたように頷いた。「そうか、それなら気合を入れて取り組むしかないな。」
「その通り」とリュウが頷く。「これを成功させれば、他の傭兵や街の人たちに、俺たちの実力を見せつけることができる。そして国の信頼を勝ち取るんだ。」
マークが拳を握りしめ、「俺たちの団が名を持つ日がついに来るかもしれないな!」
ジェシカも力強くうなずき、「絶対に成功させよう!」
リュウは仲間たちのやる気を確認し、「じゃあ、準備は整ったな。北側の古い家へ向かおう。そこがこの依頼の鍵だ。」
そして、一行は再び歩き出し、古びた家の方へ向かって進んだ。リュウたち3人の心には、国に認められるという大きな目標があった。