191話:中位モデルへの装備換装
リュウたちが魔石を大量に売ってから5日が経った頃、彼らは市場に出回る貴重な魔石の話を聞いた。
リュウは、自分たちが先日売った魔石のことを思い出し、どこまで情報が流れているか気になっていた。しかし、どこの誰がそれを手に入れたのかという詳細は、なかなか伝わってこなかった。リュウは、あの魔法道具屋のことを考えていた。金にがめつい老店主は、同時に口が堅く、秘密を漏らすことは決してなかった。味方につければ、信頼できる存在になるだろうと、リュウは確信していた。
一方、レンデは白金貨27枚と金貨87枚の分配を受け取り、困惑していた。手にしているエンバーの杖も高価だと思っており、金貨40枚の値段がついているが、市場では下位モデルに過ぎないことを思い知らされた。傭兵として活動を始めたばかりの彼にとって、これが標準的なものだと金銭感覚をあわせるのが難しかった。元々は白金貨3枚と金貨50枚程度しか持っていなかったため、急に大金持ちになった感覚に戸惑いを隠せなかった。
「白金貨1枚あれば、2年は暮らせる…」レンデは、頭の中で計算を繰り返しながら呟いた。武器や防具の中位モデルは、生活必需品や食料に比べて10倍も高価であるため、まさに贅沢品だった。
マークは、手にした白金貨27枚を思い浮かべ、ミスリルの鎧に装備を変えることを考えた。再び武器防具屋を訪れ、白金貨をチラ見せしながら、ミスリルのハーフプレートメイルに変更することを決意する。金貨2700枚を支払い、ほとんど全財産を使い切ってしまったが、期待以上の満足感があった。レザーの留め具を調整してもらい、店を訪れて3刻ほどで新しい装備を手に入れることができたのだ。
ジェシカも同様に、中位モデルのウィンドスパイラルの杖と魔力増幅の腕輪を手に入れた。金貨2000枚を支払い、彼女の魔力はさらに増幅される。新しい杖の感触に彼女は心を躍らせた。
リュウも、ミスリルのハーフプレートメイルを選ぶことにした。金貨3000枚を支払い、筋力増強のエンチャントモデルを手に入れる。マークとは異なるデザインで、肩のパーツに丸みがあり、滑らかな面で攻撃を受け流すことを目的とした鎧は、彼にとって理想的な選択だった。
こうして、3人とも装備を中位モデルに変更し、以前は控えめだった見た目が、派手に変わった。レンデを除く3人はその姿を酒場の鏡で確認し合い、満足そうだった。
レンデはそろそろ次の段階に進めると感じていた。
「これで、力だけでなく、見た目も目立つようになるな。王宮や騎士団で目をつけてもらったら、次は、リーヴァルト王国への本格調査だな」
リュウに向かってそう話しかけた。
「レンデの目的に一歩近づいたってわけね、私たち最近良い感じよ。」微笑んだリュウの横顔が、ランプの揺らめく光に照らされていた。