186話:砂漠の蜥蜴
3日目の夜、宿屋の食堂は心地よい賑わいを見せていた。リュウ、マーク、ジェシカ、そしてレンデの4人は、示し合わせたわけでもなく、自然と同じテーブルに集まっていた。3日間の休みが思った以上に長く感じられ、やることを終えた彼らは、最終日の夜に何となくこの場所に引き寄せられたかのようだった。
夕食が運ばれ、テーブルには焼き魚、煮込み料理、サラダといった素朴ながらも腹を満たす料理が並べられている。マークがまず一口食べて、「やっぱりこの宿の飯はうまいな」と大きな声で言い、満足そうに笑った。
「まさか、こんなに暇になるとは思わなかったな」とリュウが皿を手に取りながら静かに言う。休む時間が必要だとは思っていたが、連日忙しかった反動か、急に時間ができると何をしていいか分からなくなるものだ、と軽くため息をついた。
「私もだ。まあ、買い物したり、武器を見に行ったりで時間は潰せたけどさ」とジェシカが、スープをすすりながら微笑む。彼女の表情はいつも冷静だが、今夜は少しリラックスしているようだ。
一方、レンデは少し疲れた表情を浮かべながら、口元に笑みを浮かべていた。彼はこの数日間、自分の家の防備を強化することに専念していた。2日間、外でのベッド無し生活から解放された時の歓喜を思い出しながら、レンデは「ようやくダブルベッドが運び込まれた時は、本当に幸せだったよ」と呟いた。300枚以上の金貨を手にした翌日、豪勢なベッドが新居に届いたときの感動は、何物にも代えがたいものだった。
「家のドアに追加で鍵も付けてさ、窓にも防御を強化してみたけど…これ以上、何か防御できるもんがあるか考えてるところだ」と、レンデが自嘲気味に言うと、マークが笑いながら「おいおい、そんなに心配しなくてもいいんじゃないか? 俺たちに盗賊が来たらむしろ歓迎してやれよ。そいつらが面白い訓練相手になるかもしれないぜ」と冗談めかして言った。
しかし、レンデは少し考え込んだ表情を見せ、少し黙った。彼の頭の中には、最近あまり声をかけてこなくなったヘルミオのことがよぎっていた。3日間の休みの間に、そのことに気づいたが、特に深く考えようとはしていなかった。今夜も、そんな疑問を抱えたまま、レンデは気楽そうに振る舞っている。
「まあ、こんなに稼げる日もそうそうないし、こうやってのんびり過ごすのも悪くないな」とリュウが締めくくり、食事は再び賑やかな雰囲気に包まれた。
ジェシカが夕食の席で、明日の狩りの提案をしたとき、一同は興味深そうに耳を傾けた。彼女は砂漠地帯に生息する蜥蜴、デューンサーペントを狙いたいと言った。
「南東の砂漠地帯にいる、デューンサーペントってやつよ。大きな蜥蜴で、魔石が取れると聞いてきたわ。これが高値で売れるって話なの」とジェシカが情報を共有すると、マークが興味深そうに眉をひそめた。
「デューンサーペントか。それは見ごたえがありそうだな」とマークが言い、リュウが続ける。「でも、砂漠での戦いは簡単じゃない。砂嵐やカモフラージュで近づかれると手強いぞ」と警告した。
「そうだな。でも、じゃあどうやって倒すか? ジェシカ、考えてきた作戦は?」とレンデが尋ねると、ジェシカは軽く頷いてから口を開いた。
「このデューンサーペント、カモフラージュを解除するには、砂を岩に変えるか、水地帯にする必要があるの。そういうアイテムが必要だし、油をまいて砂を固めるのも一つの手だと思っているわ」とジェシカが提案すると、マークが考え深そうにうなずいた。
4人はあれこれと相談した結果、
レンデの魔法を主体として、「砂を岩に変える」ことを1番目の方法として試し、それがうまくいかなければ「水地帯にする」方法を試すことに決まり、出てきたところを、ジェシカが風の魔法で捕らえて、マークとリュウが仕留めるといういつもの作戦になった。
彼らは明日に備えて、食事が終わると各自別れて寝床へと移っていった。