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185話:リュウの休日

リュウはまだ薄暗い部屋の中で目を覚ました。昨夜の飲み過ぎを少しだけ感じながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。普段より少し遅めだが、8の刻よりは早い時間だ。窓からは朝の柔らかい光が差し込み、王都の一日の始まりを告げている。


「ふぅ、昨日は飲みすぎたかな…」


そう呟きながらリュウは顔を軽く洗い、髪を整えた。部屋を出ると、宿の階段をゆっくりと降り、食堂へ向かう。まだ人もまばらな食堂では、パンとスープが温かく用意されている。リュウは席につき、手早く朝食を済ませた後、銀貨1枚を使って少し贅沢なお茶を注文した。いつもなら頼まない高級な茶葉だが、昨日の大きな収入を思えば、たまにはこういう贅沢も悪くない。


リュウが穏やかにお茶を味わいながら、窓から外を眺めていると、階段から大きな足音が聞こえてきた。マークが、少し寝坊をしたのか、8の刻を過ぎてから降りてきたのが目に入る。寝癖が少し残った髪を乱暴に整え、どこか急いでいる様子だ。リュウはその姿を目に留めながらも、特に声をかけることなく、ただ静かに様子を見守っていた。


マークは朝食のパンとスープを大急ぎで口に入れると、すぐに立ち上がり、出かけていった。リュウはその後ろ姿を見送りながら、「どこへ行くんだろう…」と考える。昨日、派手に金を使うなと念を押したばかりだったが、今日はその言葉が届いているかは怪しい。


リュウはお茶を一口すすり、苦笑いを浮かべた。マークの大柄な背中が宿の扉をくぐる瞬間まで見送る。昨夜の宴会で「派手に使うな」と念を押したばかりだが、相変わらず落ち着きがない。酒の勢いで使いすぎてしまうのか、それともどこかに貢ぎに行くのか。リュウは心の中でため息をつくが、特に追いかけることはしなかった。


彼女自身も、久しぶりの休暇をゆっくり楽しみたい。最近は狩りや傭兵の仕事が続き、心身ともに疲れがたまっていた。こうしてお茶を飲みながら静かに過ごすのも、贅沢な時間だ。銀貨1枚を使ってまで頼んだこのお茶も、昨日の大きな収入があってこその余裕だった。

後でお肌の手入れもしたいし、今日は自分に時間を使いたい。


「まあ、マークもたまには自由にさせてやるか…」


自分に言い聞かせるように、リュウは呟く。仲間たちとの連携も大事だが、それぞれの時間も必要だ。ジェシカは相変わらず冷静で控えめだが、彼女も心の中で満足しているはずだ。マークは剣士としての実力もさることながら、楽しみ方を心得ているタイプだとリュウは思う。


リュウは窓の外を眺め、柔らかい日差しが街を照らしているのを感じた。王都はいつもと変わらず賑やかだが、自分にとっては久しぶりに静かな朝だ。リュウはこの3日間の休暇をどう過ごそうか考えながら、再びカップを口に運んだ。


一方で、マークはどこへ行くつもりなのか。その行動には、どこか決意が感じられた。



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