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179話:新居の寝心地

レンデは、新たな住処に移って少し落ち着いたものの、目立たずに生活するための対策に頭を悩ませていた。 (とりあえず急いで移ったのはいいが、ベッドもないし、まともに過ごすにはまだ準備が足りないな…) 食事も同じだ。外で堂々と食事をするのは今後しばらく控えたほうがいい。(でも、食材を買い込みすぎると、どこかに拠点を構えたことがすぐにバレる…少々厄介だ。)


(露店で軽く腹を満たしておくか。) そんなことを考えながら、レンデは身の安全を図るために買っておいたフードを深くかぶる。 近くに賑わいの通りがあり、そこまで歩くことに決めた。(4ブロックほど先にあったはずだな…)


日はすでに傾き始め、影が長く伸びる時間帯になっていた。 (昼飯を食べそこなったのは計算外だったな…) 少し気を引き締め、視線を気にしながら歩く。


露店街に到着すると、手早く食事を調達することにした。串焼き肉を2本、干し肉も馬肉で2本、さらにパンを2つ買って、家まで戻ることにする。 (しばらくこれで食いつないでおくか…)


辺りを警戒しつつ、速やかに購入を済ませ、再びフードを深くかぶって人波の中に消えた。




翌朝、レンデは、外套に包まったまま部屋の薄暗い光の中で目を覚ました。(なんで屋根のある家で、まるで野宿みたいな状況になってるんだ…) 少し苦笑しながら、未だ準備の整っていない新しい住処の環境に疑問を抱く。ベッドもなく、雑然とした部屋の中で迎える朝は、これまでの宿屋生活とは違い、なんとも言えない寂しさがあった。


(今日はリュウ達と狩りに出る約束だったな…) 昨日までの疲れを引きずりながらも、少し気分が高揚している自分に気づく。(7の刻には酒場で集合だったはず。傭兵としてなのか、狩人としてなのか、探索者としてなのか…多忙な身の上だ。)


自分の現状を冷静に見つめながらも、どこかワクワクしている気持ちを抑えられなかった。(前よりも危険な領域に近づいているはずなのに、どういうわけか肌が感じているのは恐怖ではなく、興奮だ…)


立ち上がり、身支度を整えると、フードをかぶって再び外に出る準備をする。(さて、そろそろ行くか…) 朝の冷たい空気が少しだけ心地よく感じた。



レンデは少し早めに酒場に着き、水で口を濡らしながら周囲の様子をぼんやりと眺めていた。まだ眠気が抜けきらない中、扉が開き、ジェシカが一番にやってきた。


「何だか眠そうね。もしかして、珍しく夜遊びでもしてたの?」ジェシカがからかい半分に声をかける。


(夜遊び、か…) レンデは軽く肩をすくめ、「そんなところですね」と苦笑交じりに返す。昨晩のことは話さずにおいたが、確かに自分の状況がジェシカの言う通りに見えてもおかしくないと思った。


しばらくして、リュウとマークも到着し、4人がそろった。リュウが手早く話をまとめにかかる。「さて、今日は騎士団からの依頼もないので、南の森にいるスタッグ(Stag)を狩る。こいつは大型の鹿で、皮も角も肉も、どれも高く売れる価値のある獣だ。ただ…警戒心が非常に高い。近づくのはかなり難しいぞ。」


(スタッグか…) レンデは心の中で考えを巡らせた。(狩るのは難しそうだけど、その分、得るものも多いか。)


「まあ、簡単な獲物じゃないけど、だからこそやりがいがあるってもんだ。」リュウが笑みを浮かべながら続けた。「それに、狩りの腕前を披露するにはもってこいだろ?」


ジェシカとマークも頷き、チームはすぐに準備を整えて南の森へ向かう気配が漂う。(今日も一日、また新たな挑戦だな…) レンデは仲間たちと共に、歩き出した。

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