177話:冷徹な返り討ち
レンデは南門へ向かう道すがら、数回の隠蔽を使いながらも、魔法の効果が切れやすく見えるように心掛けた。(これで追手を撹乱できるだろう。) 南門に着くと、周囲を見回しながら一息つく。
「さて、ここから出るか…」心の中でつぶやき、王都の南城門を通過した。門を出た瞬間、開放感が体を包み込む。
王都を離れ、城が視界に入らないくらいの場所まで歩くと、ふと振り返る。(やっぱり、追ってきているな。) 緊張感が高まる中、レンデは近くの林へと入った。
林に入ると、周囲を見渡しながら足早に木の根元や地面に杖を刺し、火の発火魔法を仕込んでいく。合計で10か所に火の魔法を設置し、敵の動きを封じる準備を整えた。
しばらく待機していると、やがて気配が近づいてくる。(来たか。) 目をその方向にやると、3人の剣士らしき姿が見える。彼らの表情からは緊張が感じられ、まるで獲物を狙う獣のようだった。
「風よ…」レンデは低く呟きながら、防御の障壁を発動する。彼の周りに風が渦を巻き、透明なバリアが展開された。
(これで、まずは足止めだ。) 心の中で決意を固めながら、レンデは剣士たちの動向を注視した。彼らがどのように行動するか、冷静に見極める必要がある。
剣士たちがこちらに気づくと、互いに視線を交わし、レンデの存在を確認したのだろう。彼らは警戒心を高め、動きが鈍くなる。レンデはそれを見て、静かに息を潜めた。
(さて、どこから攻めるべきか…) 彼は心の中で考えた。
男はにやりと笑い、言った。「お前くらいの下手糞な隠蔽魔法なら、追跡も簡単だぜ、たんまり貯めた金を全部出せば、命は助けてやるよ。」
レンデは、その言葉に思わず感心してしまった。(あぁ、悪党とはこういうことを言うんだな。) ぽかんとした表情で周囲を見ると、彼の後ろにいる他の男がへへっと笑った。
一方で、不安そうな男は目をキョロキョロさせ、警戒心を隠せない。レンデはその姿を見て、吹き出しそうになりながら、声を震わせて答えた。「いいのか?3人でやれるのか?」
「なに?」男が問い返した瞬間、レンデは動いた。右側に仕込んでいた火の魔法が発火し、炎が上がる。驚いた男が目を見開く間に、レンデは左腕に向けて「凍れ」と氷魔法を放った。瞬間、地面から男の左腕までが氷で凍り付く。
その様子を見た、先ほどまで笑っていた男は、慌てて距離を詰めてくる。不安そうだった男が弓を構えた瞬間、レンデはさらに攻撃を仕掛けた。氷の槍を二人に向けて放ち、あっという間に貫いた。
戦いは短時間で終わり、周囲には静寂が広がった。レンデは息を整えながら、倒れた男たちを見下ろした。(これで一段落か…だが、まだ油断はできない。)
左腕が凍り付いた男を見ながら、歩いて背中側に回ると、男は視線をレンデに向けながらおびえた様子を見せていた。
「すまなかった、命だけは助けてくれ!そんなつもりはなかったんだ…」男が命乞いをする。
「いいだろ、命だけは助けてやるよ」レンデはそう答えて、男の後ろから左肩に凍結を重ね掛けした。
男は、「くっ!、、、」と悔しそうに歯をかみしめながら、剣を持った右手で左腕を抑えた。
(残った右腕を大切にしろよ!)レンデは林を後にしながら、残してきた男に心の中で呟いた。