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171話:代償の報告

騎士団の詰め所の隣にある簡素な部屋には、重々しい雰囲気が漂っていた。木製のテーブルと数脚の椅子が並ぶだけの質素な空間だが、そこに集まった騎士たちの顔には疲労と緊張が色濃く表れていた。薄暗い照明の中で、隊長たち、ベルトラン・エイデンとグレゴール・ラーナは、いずれも怪我を負っていたが、その目には決意の光が宿っていた。


ベルトランは痛む肩を押さえながら、ゆっくりと口を開く。「報告をいたします。討伐隊は40名で出発しましたが、無事に戻れたのは32名です。残念ながら、我々は2つの群れ、計10匹のグリムドッグを討伐することができましたが、残りの10匹には逃げられました。」


彼の声は低く、重みを感じさせた。隣にいるグレゴールも頷き、続ける。「今回遭遇したのは、通常のグリムドッグとは異なる群れでした。彼らは明らかに知能を持ち、連携して襲いかかってきました。我々はこれまでにない困難に直面し、撤退を余儀なくされたのです。」


部屋の空気は一層重くなり、騎士たちの心にも不安が広がった。ベルトランは視線を床に落とし、続けた。「戦闘は熾烈を極め、我々は数名の仲間を失い、他の者も重傷を負っています。特に、総指揮官のリデア殿を失い、指揮系統が崩れたことで被害が大きくなり、撤退を余儀なくされました。」


執政官はその様子をじっと見守り、時折頷きながら話を聞いている。グレゴールが声を低くして言った。「今回の失敗を踏まえ、次回の戦いに向けてさらなる戦力を整える必要があります。グリムドッグの行動パターンを分析し、新たな戦術を考えることが急務です。」


報告を受ける執政官は、真剣な表情で言葉を返した。「次回の討伐に向けて、情報を集め、戦略を早急に再検討しましょう。私たちの安全を守るためにも、準備を怠ってはいけません。」


執政官は、隊長たちの報告を受けながら、頭の中で次第に新たな思考を巡らせていた。彼は薄暗い部屋の片隅に立ち、騎士団の被害状況をじっくりと整理する。


「傭兵部隊についても考える必要があります。」彼はつぶやくように言った。これまで彼が見守ってきた騎士団の士気や名誉が、傭兵に頼ることで損なわれることを懸念しながらも、その現実を否定できなかった。40人の傭兵が8チームに分かれて動員され、残念ながら2チームは壊滅状態に陥ってしまった。その一方で、成果を上げたのは6チームだったが、被害が多かったのは明白だった。


「壊滅した2チームのことを思えば、騎士団の動員は避けるべきかもしれません。」執政官は思考を進める。自分の心の中で、冷静な判断を下そうと努めた。騎士団の名誉を守ることも重要だが、彼らが受ける損害があまりにも大きすぎる。必要とあらば、他の選択肢を考えることもまた、責任ある行動だ。


彼は特に、今回の戦いで目を見張る功績を上げた傭兵チームを思い浮かべた。彼らは厳しい状況の中で、見事に連携し、少ない被害で最大の成果を上げていた。そうした部隊を見れば、傭兵に依頼する方が被害を抑え、効率的であることは明白だ。


「今後、騎士団だけに頼るのではなく、傭兵たちを適切に活用する方が賢明かもしれない。」彼は静かに決断した。会議の場で彼の言葉を伝えるべきか迷いつつも、心の奥で王に進言することを決めていた。


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