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170話:騎士団の帰還

その時、遠くの丘の向こうに、騎士団の旗が見え始めた。グリムドッグ討伐隊が帰還してきたようだ。


「ちょうどいいタイミングだな。」レンデはジェシカに目をやり、彼女も同じように微笑んで頷いた。だが、その微笑みはどこかぎこちなく、レンデも何か異様な気配を感じ取っていた。騎士団の旗は揺れているが、歩みは重い。何かがあったのは明白だった。


騎士団は、20人の部隊が2つで出動していたはずだった。しかし、彼らが城門を通って広場に入るやいなや、ほとんどの騎士がその場に座り込んでしまった。疲労困憊の表情、傷を負った者、肩の鎧を失った者もいて、戦いの激しさが彼らの姿から滲み出ている。


「人数が足りない…」レンデが呟く。


騎士団を指揮している二人の隊長が歩み寄ってくる。彼らの名は、ベルトラン・エイデンとグレゴール・ラーナ。ベルトランは長身で、鍛え抜かれた体つきと冷静沈着な表情が印象的な人物だ。彼の鎧は泥と血にまみれていたが、その瞳にはまだ戦士の強い意志が宿っていた。グレゴールは少し年上で、険しい顔つきをしているが、仲間への気配りができる指揮官として知られている。彼もまた、多くの傷を負いながらも、無事に帰還したことが奇跡だと思えるような風貌だった。


「被害が大きいな…」マークがレンデの隣でつぶやく。リュウも神妙な面持ちで騎士たちを見つめていた。


「怪我人が多いわね。」ジェシカが声を潜めて言った。


レンデは無言で頷いた。40人の部隊で出発したはずなのに、今城門をくぐってきたのはそれよりも少ない。何人かは重傷で、肩に担がれている者もいる。頭に包帯を巻いた者が数人いて、戦場の激しさを物語っていた。


「全員無事というわけにはいかなかった。」ベルトランが苦々しげに呟き、足を止めた。彼の鎧の肩当てには深い裂け目があり、戦いの壮絶さを物語っていた。


城門を通ってすぐの広場で、騎士たちは次々と座り込んだ。城内の待機兵たちが素早く救護に駆けつけ、怪我人を荷車に乗せて搬送を始めた。歩ける騎士たちも半数ほど、12人程度しかいなかった。彼らもよろめきながら歩いていたが、疲労の色が濃かった。


ベルトランは立ち上がり、声を振り絞って指示を出した。「これ以上、無理はさせられん。救護が必要な者は全員、詰め所まで運ぶ。歩ける者は、支え合ってついてこい!」


彼の言葉に応え、残りの12人の騎士たちは周囲の応援部隊に肩を貸してもらいながら、詰め所までゆっくりと歩き始めた。詰め所に到着すれば、簡易のベッドがあり、一時的な休息や簡単な補給食が提供されることになっている。


レンデ、ジェシカ、マーク、そしてリュウは、騎士たちを見守りながらもその場を離れることができずにいた。彼らの胸には、グリムドッグの群れとの戦いがいかに過酷であったかがひしひしと伝わってきていた。

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