17話:暴行の教室
席に着くと、レンデは周囲の目を意識しながらも、冷静にノートを広げ始めた。彼の動作は、まるで何事もなかったかのように振る舞っていた。しかし、心の中にはまだ不安が渦巻いていた。クラスメイトたちは彼の登校に驚きながらも、口を閉ざし、誰も声をかけようとはしなかった。レンデはその無言の視線に耐えながら、少しずつ教室の雰囲気に溶け込もうとしていた。
しかし、その静けさは長くは続かなかった。教室の扉がギシギシと音を立てて開き、2人のいじめっ子が中に入ってきた。彼らは教室の雰囲気を一変させ、視線を一瞬で支配した。リーダー格のアレクは背が高く、筋肉質の体格が目立つ。彼の鋭い目は冷ややかで、その口元には不快な笑みが浮かんでいた。アレクは自信満々で、教室に入るとすぐにレンデを見つけた。
その隣に立つボブは、アレクよりも少し小柄だが、がっしりとした体つきで力強さが感じられる。ボブの目もまた鋭く、アレクの一歩後ろで無言の威圧感を放っていた。彼らはレンデの方に歩み寄り、その動きには明らかな意図が感じられた。
アレクはレンデの前に立ち、冷ややかに言った。「おい、レンデ。こんなところで何をしているんだ?」その言葉には明らかな挑発が込められていた。
レンデはその姿に一瞬驚き、彼の心の中で警戒の感情が高まった。しかし、アレクとボブの存在が、彼の平穏を一気に打ち砕いた。
「おう、レンデ、また学校に来られるようになったんだな。」アレクが冷たく言った。
ボブが後ろでくすくすと笑いながら、アレクがレンデの胸ぐらを掴んで引き寄せた。その手は強引にレンデの制服を引っ張り、彼の目をじっと見つめた。アレクの表情には、明らかに冷やかしと挑発の色が浮かんでいた。
「よくもまた来たな、怪我したってのに。」アレクが言いながら、さらに力を入れてレンデの制服を引っ張った。
レンデは息が詰まるような苦しさに、顔をしかめながら耐えた。彼の心臓は激しく打ち、手のひらに汗が滲んだ。突然、彼の内側でヘルミオの声が響いた。
「冷静に、レンデ。力を制御し、状況を打開するんだ。」
その声に従い、レンデは震える手でアレクの腕を掴んだ。彼の体が瞬時に魔法の力で強化され、発動した。レンデの手にかかった力は、アレクの腕に急速に伝わっていく。
「うっ…!何だ、この力は!?」アレクが驚きと痛みの入り混じった声を上げた。
レンデの手がアレクの腕を掴むと、その腕にひびが入り始めた。音もなく骨が折れていく感触が伝わってきた。アレクは痛みに叫びながら腕を振り払おうとしたが、レンデの魔法によって力が強化されているため、簡単には外れなかった。アレクの顔は青ざめ、彼の痛みの表情が教室の中に広がっていった。
ボブはその光景に目を見張り、呆然と立ち尽くしていた。「アレク、どうなってるんだ!?」
アレクはレンデからようやく腕を引き剥がし、痛みに苦しみながら後退した。教室の中は一瞬にして静まり返り、クラスメイトたちは呆然とその光景を見守っていた。
レンデは冷や汗をかきながら、深呼吸をして自分を落ち着けようとした。ヘルミオの力が抜けた瞬間、彼はふらつきながらもなんとか立ち直った。
アレクとボブは痛みと驚きの中でその場から逃げ去り、教室に残されたのはレンデと彼に対する新たな視線だけだった。