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169話:大地を抉る魔法

「最後の技を試そう…」レンデは決意を込めて、深く息を吸い込んだ。周囲の空気が重く感じる。彼の視線は地面に固定され、「大地圧殺」に全身全霊を注ぐ準備を整えた。手を地面にかざすと、土と石がうねるように揺れ始め、上空に大きな岩の足の形がゆっくりと出現した。しかし、それはまだ不安定だった。レンデは歯を食いしばりながらイメージを集中させる。


「もっと…細かく…」彼は自身に言い聞かせるように、足の形をさらに明確にイメージし始めた。岩の筋、土の重さ、圧力のかかり具合――そのすべてを完璧に制御しようと試みる。だが、数度の試みでは足跡は浅く残るばかりで、彼が望むほどの力は発揮されなかった。


「くそ…まだだ…!」レンデは焦燥感を感じながらも、諦めなかった。彼は再び両手を地面にかざし、深く集中する。今度は岩の形を一層詳細にイメージし、その足が大地を踏みつける瞬間までを頭の中で完璧に描いた。岩の足が崩れるのではなく、力強く、確実に圧力をかけるように――その瞬間、彼の体に魔力が奔流のように溢れ出し、全身を通じて制御できる感覚が訪れた。


「いける…今度こそ…!」レンデは叫び、最後の一撃を込める。


足の形をした巨大な岩が天空に浮かび上がり、彼の指示通りに動き出す。今までにないほど鮮明な形を保ち、その岩足はまるで生きているかのように地面を目指してゆっくりと降下していった。すると、地面が低く唸り、周囲の空気が振動し始めた。


「これが…『大地圧殺』だ!」


岩の足が地面に到達すると、轟音とともに大地が震え、強烈な衝撃波が四方に広がった。地面は深く割れ、巨大な足跡が刻まれる。周囲の石や土が激しく飛び散り、足跡の中心に圧倒的な力が集約された。その威力は計り知れず、まさにレンデが目指していた魔力だけではなく物理的な破壊力を込めた、イメージ通りの破壊力だった。


レンデは大きく息を吐き、振り返りながらその光景を見つめた。そこには、深く抉られた大地が広がっていた。ようやく、彼は自分の目指した魔法の完成形を手に入れたのだ。


「やった…!これで…完璧だ…!」


「もう一度やってみるか?」レンデは冗談めかして言ったが、彼の中にはすでに確かな自信が芽生えていた。今日の練習は苦労こそあったものの、彼が一歩先に進むための重要な時間だった。


そのころリュウとマークは、キャンプ地で昼食の準備を進めていた。焚き火の上でスープが煮え、野菜の香りが漂っている。リュウはナイフで野菜を切りながら、マークが鍋をかき混ぜていた。穏やかな時間が流れていたが、突然、地面が微かに震え始める。


「なんだ…?」リュウが眉をひそめ、ナイフを止めた。


次の瞬間、轟音と共に遠くの地面が大きく隆起し、ものすごい衝撃が周囲に響き渡った。二人は反射的に体を低くし、バランスを取ろうとしたが、あまりの激しい揺れに焚き火の上の鍋が倒れかけ、リュウが慌ててそれを押さえた。


「おい、なんだこれ!?」リュウが叫びながら、マークに視線を送る。


そのとき、二人の目に入ったのは、遠くで巨大な岩の足跡が大地に刻まれた光景だった。大地が深くえぐられ、そこから煙が立ち上っている。その中心には、レンデの姿があった。


「まさか…レンデがやったのか…?」マークが信じられないという表情で口を開く。


リュウも驚きのあまり言葉を失ったが、次第に状況が飲み込めてきた。


「まさに大魔法だな。これで、あいつも一人前だってことか…」マークが感慨深そうにレンデの方を見つめた。


リュウはそれを聞いてニヤリと笑い、肩をすくめながら、再びナイフを握り直した。



その時、遠くの丘の向こうに、騎士団の旗が見え始めた。グリムドッグ討伐隊が帰還してきたようだ。


「そろそろ時間だな。」レンデはジェシカに目をやり、彼女も同じように微笑んで頷いた。レンデの心には、まださらなる成長への渇望があった。


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