164話:狩人たちの夜
マークは嬉しそうに言った。「今日も夜までに王都に戻れて、本当に良かったな。レンデの驚速魔法のおかげで、国境までの距離を短縮できて助かっているよ。」
レンデは微笑んで応じた。「確かに、あの魔法がなかったら、ここまで迅速には戻れなかっただろうね。宿屋に泊まれるのも、かなりの助けになるよ。」
ジェシカが頷きながら言った。「今日はゆっくり休んで、また明日からの活動に備えよう。いい結果を出せたし、報酬も満足いくものでしたからね。」
「それにしても、あの解体所は手際がいいよね。」とリュウが付け加えた。「あの量のグリムドッグが一度に持ち込まれるなんて、普通では考えられないから、かなりの注目を集めているだろう。」
一同が話し合っていると、王都の宿屋に到着。暖かい灯りと心地よい空気に包まれて、彼らはほっと一息ついた。レンデは宿のスタッフに挨拶をしながら、部屋の鍵を受け取る。部屋に入った彼らは、疲れを癒すために早めに休むことにした。
「明日も忙しいだろうから、しっかりと休んでおこう。」とレンデが言い、皆が頷いてそれぞれの部屋に消えていった。
その夜、宿の静かな部屋でレンデは布団に身を沈め、心地よい眠りに入っていた。
しかし、夜も遅くなってから、宿屋の廊下から複数の足音が聞こえてきた。マークの声と、女性たちの声が混ざり合いながら廊下を歩く音が響いた。
どうやらマークが複数の女性とともに宿屋の部屋に戻ってきたようだ。足音が近づいたり遠のいたりする中で、レンデは少し目を開けて音の方に耳を澄ませたが、特に気にすることもなく、そのまま再び眠りについた。
討伐隊が出発してから5日目の朝がやってきた。予定通りなら、騎士団の討伐部隊、合計40名が今日中に王都に帰還するはずだ。レンデは、傭兵部隊としての最後の任務日になるため、一応、王都周辺で何もいないか確認するつもりで、狩りのふりをして騎士団の帰りを待つことにした。
朝がすっかり昇りきった頃、レンデは宿屋のロビーに降りてきた。時計の針は8の刻を指している。宿の朝食をゆっくりと頂いていると、マークが階段を降りてきた。少し遅れてジェシカも姿を現し、最後にリュウが現れた。テーブルにはスープとパン、厚切りのオークハムが並び、マスタードや塩で自由に味付けできる。
「9の刻には出発する予定だ。」レンデはみんなに声をかける。「騎士団の帰りを王城の外で迎えるため、準備が整い次第出発しよう。」
全員が朝食を済ませた後、部屋に戻り、準備を整えてから出発した。王都の門を出て、2刻ほど進むと、平原が広がり、雑木林が見える。野兎を探しながら進むつもりだった。
雑木林の近くで、茶色い影が動くのを見つけた。影は大きく、ただの野兎ではないようだ。レンデは仲間たちに合図し、慎重に近づく。影の正体が明らかになるまで、警戒をしながら進む。