162話:眠れる獣の夜
むせかえるような血の匂いが、鼻を突き刺す。地面はまるで真っ赤な絨毯のように、血で染まっていた。レンデは手綱を握りながら、その光景に眉をひそめた。周囲には散乱した武器と、無残な状態で横たわる死体が見える。
「これは…ひどいな。」リュウが思わず口に手をやる。
「引きずられた跡が、林の奥へ続いているな。」リュウが低い声で言い、レンデたちの視線はその先に集中する。血の痕がすじになって続き、林の奥へと消えている。何かがこの場所から運ばれたようだ。
「馬をここにつないで、慎重に進もう。」レンデが静かに指示を出す。4人は馬をしっかりと木につなぎ、音を立てないように歩みを進めた。
森の奥へ進むにつれ、草や枝が踏み潰された跡が目立ち始めた。やがて、視界の先に暗がりの中でうごめく影が見えた。
「いたぞ。」マークが囁くように言う。その先には、腹が膨れ、満腹感に満ちた様子のグリムドッグたちが、眠ろうとして横たわっていた。彼らは今朝の襲撃の生け贄たちを貪り食い、今や休息をとっているようだ。
「油断しているようだな。」リュウが鋭い目をして、剣の柄に手をかける。「この隙に仕留める。」
レンデは静かに頷き、仲間たちと目配せをする。ここで一気に片をつけるため、慎重に攻撃の準備に取り掛かる。
レンデは小声で作戦を打ち合わせながら、魔法の準備を整える。「全てのグリムドッグが眠るように、催眠を掛ける。今起きているのはざっと半分もいないから、4重掛けすれば全部が眠るはずだ。その隙に、とどめを刺していって、起きてきた残りを始末する。」
レンデの言葉が仲間たちに伝わると、ジェシカは迅速に手持ちの短剣に風魔法を纏い、切れ味を上げる。彼女の目が決意に満ちている。「風の刃で一気に切り込むわ。」
リュウとマークもそれぞれの役割を確認し、準備を整える。リュウは一歩前に出て、短刀を手に持ちながら、敵が起きる前に素早く仕留める意気込みを見せる。マークは後方から支援する準備を整える。
レンデが深呼吸し、魔法の詠唱を始める。空気が震えるような感覚とともに、魔法のエネルギーが集まる。催眠の魔法が四重に織り込まれ、グリムドッグたちに向けられる。
魔法の光が森の奥に広がり、眠っているグリムドッグたちにじわじわと浸透していく。数分もすると、動いていた者たちが次々と静かに眠りに落ちていく。レンデがその様子を確認し、仲間たちに合図を送る。
「今だ、始めろ!」
ジェシカは短剣を振り上げ、風の刃を纏ったまま、静かに近づいていく。リュウも一刀両断の準備をし、マークは後方から適切なタイミングで支援の準備を整える。レンデも安全を確認しながら、最後の魔法の準備を進める。
グリムドッグたちが一匹また一匹と、静かに眠っている間に、レンデたちは確実に仕留めていく。すぐに目を覚ました残りのグリムドッグたちにも対処し、全ての敵を確実に排除していく。




