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150話:心を繋ぐ夜

レンデは隣にいるエリスの存在が気になりすぎて、眠れなかった。ベッドに入ったものの、心臓の鼓動は速く、体は緊張でこわばっている。隣のエリスもまた、もぞもぞと動いている気配がする。


「私、待ってたのよ…」エリスの声が、静かな夜の中で聞こえた。彼女の言葉に、レンデは思わず身を硬くする。「初等魔法学校を出てから、もう3年よ。そろそろ…いいんじゃない?」


その言葉に反応して、レンデは左を向いた。そこには、すぐ近くでエリスの顔が見えた。彼女の真剣な瞳が、暗がりの中でもしっかりとレンデを見つめていた。


「女の子に恥をかかせちゃいけない…」レンデはそう思った。けれど、それだけじゃない。エリスは、レンデにとって特別な存在だった。彼が教室で落ちこぼれだった頃、最初に声をかけてくれたのはエリスだった。黒い魔術師に囚われそうになった時、立ち向かってくれたのもエリス。レンデが意識を失い、3年間眠っていた時も、ずっと彼を家で守り続けてくれたのはエリスだった。


彼女の気持ちに応えなければいけない――それに、エリスがいなければ、自分はここにいない。レンデにとって、エリスは大切な存在で、帰ってくる場所なのだと、ようやく気づいた。


レンデは静かにエリスの顔に近づいた。彼女の瞳が少し驚いたように揺れたが、すぐにそれは柔らかな笑みに変わる。そして、二人の唇が触れ合い、優しいキスを交わした。レンデはそっとエリスを抱きしめ、彼女も同じようにレンデの背中に手を回した。


時は流れ、8の刻を過ぎ、ふたりは穏やかな時間を過ごしていた。温泉で温まった体も、少しずつ冷めていく。温もりが薄れていくにつれて、緊張していた体もリラックスし、眠気が二人を包み込んだ。


何も起こらず、ただ静かに、二人は眠りに落ちていった。


翌朝、朝日が部屋を優しく照らす中、ほぼ同時に目覚めた二人は、ベッドの中でお互いを見つめ合った。昨夜の出来事が静かに胸の中に残り、再び自然に顔が近づいていった。そして、もう一度キスを交わし、互いの存在を感じ合った。


その穏やかな空気を破るように、ノックの音が部屋に響いた。


「失礼します…」とメイドが入ってきた。彼女はドアを開けた瞬間、少し驚いたような表情を見せたが、すぐに平静を装って頭を軽く下げた。


「準備が整いましたらお呼びくださいませ。」メイドは少し戸惑いながらも、冷静に言葉を続けた。そして、何も見なかったかのように静かに部屋を後にした。


二人はしばらく沈黙の中で、メイドが出ていった扉を見つめていたが、やがてレンデが小さく息を吐いた。


「…やれやれ、びっくりしたな。」


エリスはクスクスと笑いながら、まだ頬を少し赤らめていた。彼女はゆっくりと起き上がり、ベッドから出る準備を始めた。


「今日は何をする?」エリスが振り返ってレンデに問いかけた。


レンデは一瞬考えた後、「まずは朝食を食べて、その後はゆっくりしよう。温泉でもう一度リラックスして、今後のことも考えたいし…」と答えた。


エリスは頷きながら、「それもいいわね。じゃあ、準備しましょう」と言って、楽しそうに支度を始めた。


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