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143話:控えめなる戦術

リュウ・アケミとレンデが騎士団の出入り口から出ると、二人は自然と別々の方向に進み始めた。


「俺は負傷した仲間たちのところへ向かう。彼らは今、教会に運び込まれていると聞いた。」リュウ・アケミは真剣な表情でそう告げると、レンデに軽く手を振り、足早に教会へと向かった。


レンデは一人、その背中を見送りながら、ふとエリスのことを思い出した。領地で彼を待つ彼女の顔が浮かび、自然と微笑みがこぼれた。「エリスのところへ一度戻ろう…」と心の中で呟き、レンデも歩みを進めた。



レンデは二度の調査部隊への参加と、その調査結果に応じて受け取った追加の報奨金で、合計40枚の金貨を手にしていた。エリスに借りた40枚の金貨はすべて新しい杖を購入するために使ってしまっていたため、今得た金貨でそのまま返済するつもりだった。


王都での最後の朝、宿を出る前にレンデは考えた。エリスへの借金を返すだけでは味気ない。何か土産を持って帰るべきだろう。そこで、レンデは路銀の一部を使って王都で有名な菓子、パンデビスを購入することにした。


パンデビスの店は、王都でも評判の高い老舗だ。店先に並べられたパンデビスは、香ばしいスパイスの香りが漂っており、外は固めだが中はしっとりとしている。表面には蜂蜜が光るように塗られ、噛むと豊かな甘みとスパイスの複雑な風味が口いっぱいに広がる。シナモンやクローブが効いており、噛むたびに温かみのある香りが鼻に抜ける。エリスが喜びそうだ、とレンデは思いながら、いくつかのパンデビスを包んでもらった。


馬屋で馬を調達し、エリスの領地に向けて出発する。領地までは約3日かかるが、急ぐ必要もない。レンデはのんびりと馬を進めながら、ヘルミオとの会話を始めた。


「なぜ、グリムドッグに襲われたとき、魔法で一発で薙ぎ払わなかったんだ?」と、ヘルミオが問いかける。


レンデは少し考えてから答えた。「敵の領域で派手な魔法を使うと、余計な注目を引いてしまうからな。黒い魔術師に到達するまでは、なるべく目立たないようにしたいんだ。」


ヘルミオは静かに納得しながらも、さらに問いかけた。「じゃあ、リッチと戦ったときも同じ理由で魔力を温存していたのか?あの時、少しピンチに見えたが…」


レンデは馬のたてがみを撫でながら答えた。「リッチの力を測るために慎重に動いた。あのリッチは普通のランクに収まらない存在だ。あの場で生き延びたのは、ただの幸運だった。」


ヘルミオは黙って頷いた。レンデはパンデビスの甘い香りを思い出しながら、馬を進めていた。

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