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142話:滅びの兆候

リュウ・アケミとレンデは、騎士団への報告を済ませた後、別室で待機するよう命じられた。騎士団長が報告を受けた騎士たちと共に対策を検討している間、二人は静かに緊張の時を過ごしていた。


しばらくして、重い扉が静かに開き、一人の騎士が姿を見せた。「お待たせしました。こちらへどうぞ。」騎士の案内に従い、二人は通路を進んだ。幾度か角を曲がり、やがて黒い扉の前で足を止めた。


「杖と剣をお預かりします。」と騎士は言い、リュウ・アケミとレンデはそれぞれの武器を手渡した。騎士が黒い扉を開けると、その先には荘厳な雰囲気が漂う部屋が広がっていた。


部屋の奥には、年老いた騎士と、堂々たる姿をした人物が待っていた。二人の姿は明らかにただ者ではなく、特に中央に立つ人物は、その威厳と風格からおそらく王であることが一目で分かった。


リュウ・アケミとレンデは、すぐに膝をついて頭を下げ、深い敬意を示した。王がゆっくりと口を開く。「立ち上がれ。そして、報告を聞こう。」


リュウ・アケミはゆっくりと立ち上がり、まずは簡潔に状況を説明し始めた。「私たちが国境を越えた直後から、幾度も魔物の襲撃を受けました。最も危険だったのはリッチとの遭遇です。リッチは非常に強力で、部隊は壊滅寸前でしたが、幸運にも生還できました。」


レンデが少し緊張しながら口を開いた。「リッチはなぜか私を指名し、興味を持っていたようです。彼は、私を試すような言葉を残し、最後には追撃をせずに去っていきました。それがなぜなのか、私自身も理解できていません。」


部屋は静まり返り、王と老齢の騎士がその報告を深く考え込むように聞いていた。


「リッチがレンデに特別な関心を示したことは、見逃せない情報だ。」と老齢の騎士が口を開く。「これはただの襲撃ではなく、何かより大きな目的があるのかもしれん。」


王は重々しく頷き、静かに言葉を紡いだ。「リッチが現れるとは、ただならぬ事態だ。彼らの存在は王国にとって重大な脅威である。これからの戦いに備え、万全の対策を講じる必要がある。」


リュウ・アケミとレンデは、再び深く頭を下げ、その言葉を重く受け止めた。


王はリッチの目的について考え込み、静かに口を開いた。「リッチがこのような形で出現するということは、何か深刻な事態が背後にあると考えざるを得ない。このリーヴァルト王国の近郊で彼らが姿を現した理由について、お前たちはどう思う?」


リュウ・アケミとレンデが言葉を選びかねていると、老齢の騎士が口を挟んだ。「陛下、このような事態について、一介の傭兵である彼らに答えを求めるのは酷ではないでしょうか。彼らが知り得る情報は限られております。」


しかし、レンデはその言葉に動じず、しっかりと王の目を見つめて答えた。「陛下、おそらくリーヴァルト王国はすでに存在していないのではないかと考えます。あの国は、リッチか、悪魔か、それに類する強大な存在に支配され、城がその住処となっている。そして、その支配下にある国民もすでに生者ではなくなっている可能性が高いと。」


その言葉に、部屋の空気がさらに重くなった。王は目を細め、深い思索に沈むように視線を落とした。「リーヴァルト王国が…すでに滅び、死者の国となっていると…」


老齢の騎士も黙り込み、その深刻な事態の可能性を認識していた。


「もしそうであれば、これは我が王国にとって重大な危機だ。」王の声は冷静でありながら、どこか深い憂慮を含んでいた。「リッチがリーヴァルト王国を支配しているのなら、次に狙われるのは我々の国だ。我々が備えを怠れば、同じ運命を辿ることになるだろう。」


「お前たちの報告は重要だ。これから先、リッチの動向を探り、我が国の安全を守るために、我々は全力を尽くす。」王は力強い声で告げると、静かに部屋を後にするように命じた。


リュウ・アケミとレンデは杖と剣を受け取り、深々と礼をして部屋を後にした。


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