140話:リッチの猛攻
リッチの冷たい声が、爆発の煙が晴れた後も響き渡る。リッチは突然、レンデを指さし、その鋭い目で彼を見据えた。
「そこに強者がいるな?」リッチの声には、興味と威圧感が混じっていた。「なぜそこにいる?こちら側に来ないか?」
その言葉は、レンデに対しての挑発と誘いのように聞こえた。リッチの冷たい目が、レンデの姿をじっと見つめ、彼の強さを認めているかのようだった。
レンデはその言葉に対して、憤りを込めた表情で答えた。「ふん、俺をお前の傘下にしようなんて、いい気になるな。お前のような死霊と同じ側に立つなど、真っ平ごめんだ。」
リュウ・アケミがすぐにレンデの側に駆け寄り、「レンデ、リッチの誘いには絶対に乗るな。油断するなよ。」と警戒を呼びかけた。
ジェシカは呪文の詠唱を続けながら、「リッチの言葉に惑わされるな。私たちは王都を守るためにここにいる。お前のような存在に屈することはない。」と強調した。
リッチはレンデの反応を見て、冷笑を浮かべた。「なるほど、なかなかの頑固者だな。それならば、こちらから徹底的に挑むしかないか。」
リッチは再び魔法の杖を振り上げ、氷の魔法を放とうとした。
「炎よ、風よ!」
レンデの周囲に炎と風が集まり始め、彼の魔法の杖から放たれるエネルギーが激しく旋回する。炎と風の渦が次第に強くなり、その中で高温の炎が渦巻いていく。
「融合」レンデが魔法の言葉を唱え、炎の渦をリッチに向けて放つ。
炎の渦がリッチに向かって高速で飛び、冷気のバリアを突破しながら接近していく。炎の渦は周囲の冷気を溶かし、その圧倒的な熱量でリッチを包み込むように広がっていった。激しい炎がリッチの周囲を燃やし尽くし、氷のバリアを瞬く間に溶かしていく。
リッチはその猛烈な炎の渦に驚愕し、冷気のバリアを必死で強化しようとしたが、炎の圧力に押されて次第に防御が崩れていった。リッチの姿が炎の中に包まれ、彼の冷徹な表情が一瞬にして苦痛に変わった。
「ぐっ…!」リッチの呻き声が響き、彼の体が炎の中で揺れる。冷気の魔法が炎によって圧倒され、リッチの周囲に熱波と煙が立ち込める。
「今だ!」リュウ・アケミが叫び、仲間たちが一斉に攻撃を開始した。ジェシカが聖なる光の魔法でリッチの姿を照らし、エリス・グレイが弓で狙いを定め、シルヴァン・ローレンスや仲間たちが剣を構えてリッチにとびかかった。
「舐めるな!」
冷気の波動がはじけ飛んで、とびかかった4人が弾き飛ばされた。
シルヴァンは空中で体勢を崩しながら地面に叩きつけられ、エリスも弓を手放しながら転がる。マークは盾を構えていたが、その力強い冷気に圧倒されて盾ごと後方へ吹き飛ばされた。リュウ・アケミも同様に、冷気の波動に巻き込まれて地面に転がった。
「うっ…!」リュウが呻き声を上げながら地面に倒れ込み、周囲の仲間たちも無事ではいられなかった。
「皆、大丈夫か!?」ジェシカが焦りながら声を上げる。彼女はすぐにその場に駆け寄り、仲間たちを助け起こそうとする。
レンデは状況を見守りながら、再び魔法の力を集中させてリッチに向かって放とうとした。しかし、リッチの冷気の波動によって一時的に戦場が混乱し、レンデもその影響を受けていた。
リッチの冷徹な冷気が戦場を包み込み、部隊はその影響で混乱していた。レンデは必死に再び魔法を集めようと奮闘し、周囲の仲間たちも立ち上がろうとする中、リッチの姿が再び現れた。
リッチは、その不気味な冷気の波動を発しながら、レンデに冷ややかな目を向けた。「次に会う時までに、考えておけ…」リッチは言い残し、その言葉と共に空に向かって浮かび上がり、徐々に姿が霞んでいく。
「くっ…!」レンデがその言葉に憤りを感じながら、リッチが消えていく様子を見つめる。リッチの消えた空中には、まだ冷気の残り香が漂っていた。