139話:火の槍
明け方の薄暗い時分、焚火の周りに集まって眠っていた部隊のメンバーたちは、まだ深い眠りに落ちていた。冷え込む夜の静けさが辺りを包んでいたが、その静寂を破るように、火の見張り番が慌てた声で叫び始めた。
「おい、やばいぞ!起きろ、みんな!」
リュウ・アケミが突然の叫び声で目を覚まし、すぐに周囲に注意を向けた。目の前に立つ火の見張り番は、顔色を失い、焦りの表情を浮かべている。
「どうした?」リュウが急いで尋ねた。
見張り番は震える声で答えた。「恐らくレイスだ…死霊が近くにいる。気配がすごく強い。あっちから動いてくるのが見えたんだ!」
部隊の全員が一瞬にして警戒態勢に入り、急いで装備を整え始めた。ジェシカが魔法の準備をしながら言った。「死霊か…それは厄介だ。早く対策を立てないと!」
そのとき、部隊がまだ眠気から覚めきらぬうちに、暗闇の中で黒い霧が立ち昇り、その中から冷徹な存在が現れた。見張り番の叫びが響く中、部隊の背後から、強力な死霊—リッチが姿を現した。リッチは、古びたローブに包まれ、手には魔法の杖を持ち、周囲に氷の冷気を放っている。
リッチの冷たい声が空気を震わせた。「獲物が俺の領域に無断で踏み入るとは…覚悟しろ!」
言い終わると同時に、リッチは手を振り上げ、冷気を帯びたアイスジャベリン(氷の槍)を発射した。その氷の槍は一瞬にして空中を切り裂き、部隊に向かって飛んでいく。
「気をつけろ!」リュウ・アケミがすぐに警戒の声を上げ、仲間たちを避けるように指示した。
だが、リッチの攻撃は止まることなく連続して繰り出され、アイスジャベリンが次々と仲間を貫いていく。氷の槍が地面に突き刺さると、その周囲は瞬く間に凍りつき、部隊の足元を危険な状態に変えていった。
エリス・グレイが素早く弓を取り出し、「弓で応戦するわ!」と叫びながら、リッチの姿を狙った。矢が空中を飛び、リッチに向かって放たれるが、その冷気のオーラに阻まれ、なかなか命中させることができない。
ジェシカは、即座に魔法を準備し、「聖なる光よ、我に力を!」と詠唱を始める。彼女は防御の魔法を発動し、仲間たちを守るためのシールドを展開しようとしたが、リッチの攻撃は熾烈を極めていた。
リッチの冷徹な氷の攻撃が続く中、レンデは焦りと決意が入り混じった表情で魔法の杖を握りしめた。リッチの氷の槍が次々と飛んでくるのをかわしながら、レンデは戦況を見極め、ここで一発逆転を狙う決断を下した。
「火よ」レンデが強い声で呟き、杖に魔力を集中させた。彼の手のひらから、強力な火のエネルギーが集まり始める。
「火槍!」レンデが呪文を唱え、火のエネルギーを一気に放った。火の弾丸は、リッチの周囲の氷の霧に向かって放たれ、空中で激しく燃え上がりながら接近していった。
レンデの放った火の弾丸がリッチの周囲に到達すると、猛烈な爆発が起こり、炎と煙がリッチを包み込んだ。リッチの冷気に対抗するように、火の爆発が氷の壁を突き破り、その周囲に強烈な熱波をもたらした。