表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/198

138話:群れのあと

激しい戦いを終え、部隊全員が疲労を感じつつも無事に生き残ったことに安堵していた。倒したグリムドッグの死体があたり一面に散らばり、その数の多さに誰もが驚きを隠せなかった。


「まさか、国境を越えてすぐに襲われるとは思ってもみなかった。」リュウ・アケミが険しい表情でつぶやく。「前回の調査報告よりも、数が多かったな。」


ジェシカがその言葉に頷きながら、「これ以上ここに留まるのは危険よ。早く次の場所へ移動するべきだわ。」と同意した。


レンデが周囲を見回しながら冷静に提案した。「でも、このまま死体を放置しておくと、他の獣たちが匂いを嗅ぎつけて集まってくるかもしれない。出発前に、魔法でこれらの死体を処理しよう。」


リュウは一瞬考えた後、力強く頷いた。「確かに、それが賢明だな。レンデ、頼む。」


レンデは再び手に魔力を集中させ、炎の魔法を練り上げた。「火よ」呪文を唱えると、彼の手から強力な炎が放たれ、次々とグリムドッグの死体に向かって広がっていった。


炎は瞬く間に獣の死体を包み込み、強い熱と光を放ちながら燃え尽きていった。焼かれる死体からは煙が立ち昇り、その跡には黒く焦げた地面だけが残された。


「これで他の獣が寄ってくる心配はないだろう。」レンデが炎を収めながら静かに言った。


「助かったわ、レンデ。」ジェシカが微笑みながら感謝の意を伝える。


リュウは全員に声をかけた。「よし、全員、馬に戻れ!早くここを離れるぞ。」


マーク・ドレイクが馬に跨りながら、「焼き払ったことで少しは安全になったが、気を緩めるな。」と皆に注意を促す。


部隊は素早く馬に跨り、周囲を警戒しながらその場を後にした。



王都に向かう道のりは険しく、部隊は想像以上の苦戦を強いられていた。国境を越えた後も、グリムドッグが何度も彼らを襲い、予定通りに進むことができなかった。2日間の行程のはずが、実質的には1日分しか進めていない。


「これで予定日程の半分が過ぎたわけか…」リュウ・アケミが地図を見ながら、厳しい現実に直面していた。思ったよりも進展が遅れており、王都までの道のりがさらに遠く感じられた。


「もう少し先に行きたかったが、これ以上は無理だな。」マーク・ドレイクが辺りを見渡しながら言う。「今夜はここで野営するしかない。」


「全員、野営の準備だ。」リュウが部隊に指示を出す。「少し冷える夜だから、焚火を大きめにしておけ。」


ジェシカとレンデが手分けして、焚火を準備し始めた。乾いた木の枝を集め、火をつけると、焚火は勢いよく燃え上がった。暖かい炎が、疲れた部隊の体を少しずつ温めてくれる。


「この夜の寒さは骨にしみるわね。」ジェシカが外套に包まりながら、焚火の傍で微かに笑う。「でも、火のおかげでなんとか凌げそうね。」


レンデも外套をしっかりと身にまとい、焚火の暖かさを感じながら静かに言った。「明日は少しでも進めるといいんですが…」


「そうだな。だけど、今は休むのが先決だ。」リュウが全員に目を向けながら言った。「今夜はここでしっかりと体力を回復し、明日に備える。」


エリス・グレイとシルヴァン・ローレンスも、それぞれ外套に包まり、焚火の周りに集まった。焚火の光が、彼らの疲れた顔を優しく照らし出している。


「早く眠ろう。明日はさらに険しい道のりになるだろう。」エリスが小さな声でつぶやき、目を閉じた。


夜の冷たい風が草原を渡り、焚火の煙を空へと運んでいく。部隊の全員が、外套に包まって暖を取りながら、疲れた体を休めるために次々と眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ